日本ハム・新庄剛志監督(50)の交流戦2週目は、1勝5敗と振るわなかった。それでもマツダスタジアム、甲子園球場で、地元ファンの大歓迎を受けた。

 両球場とも試合前練習の合間、メンバー表交換直後、試合中のイニング間、選手交代時、試合終了直後とチームの勝敗にかかわらず、少しの時間を見つけては客席のファンに手を振っていた。

 パ・リーグでは見慣れた光景。だが、セのファンには新鮮なのだろう。異例のファン対応とあって、試合後のマツダスタジアムでは新庄監督が帰りのハイヤーに乗り込む際、鈴なりのカープファンが囲んだ。

「(カープファンは)タイガース時代からめっちゃ温かいですよ。広島でプレーしたいなって思うくらい、いい球団だなと思っていました。でも(赤いチームカラーが)嫌だったね。(自分のトレードカラーが)目立つことがないから(笑い)」

 こう言って広島ファンに敬意を示した新庄監督は、古巣・甲子園でもメンバー表交換直後にマウンド方向に歩み寄り、バックスクリーンに一礼。「監督として帰ってこられて、ありがとうという気持ち」を込め、超満員の阪神ファンから万雷の拍手を浴びた。

 昨年11月の監督就任直後から「ファンあってのプロ野球」という思いを語り、それを今季のチームスローガン「ファンは宝物」に込めた新庄監督。嘘のない本音が日々、球場での振る舞いに体現されている。

 一方で、耳当たりのいいこの言葉が〝便利〟に〝軽く〟扱われている現状に、ビッグボスはこう警鐘を鳴らしてもいた。

「言うだけで何かしてますか? 言うだけで選手に(ファンサービスを)押しつけていないですか?」

 これは就任直後、自らを含めて12球団の監督に向けて発せられた戒めの問いかけでもある。

 本気で「ファンは宝物」と思うなら、まずリーダーが手本を示そう。現場に何か指示を出すのなら、まずトップが率先してファンサービスをしなければ、下の人間はついてこない。それを日々、ただコツコツと実践している。

「球界を変えたい」というビッグボスの思いは派手な言動やパフォーマンスよりも、日々のルーティンにこそ宿っている。