「完全試合男」を止めた! 巨人は3日のロッテ戦(東京ドーム)で相手先発・佐々木朗希(20)から5得点を叩き出し、5回でKOした。無双状態だった怪物右腕に今季初の黒星をつけ、チームは10―3で劇勝した。160キロ台の剛速球を連発する佐々木朗を攻略したことで、戦前からささやかれていた〝あの恐怖マシン〟の再登場やバージョンアップは立ち消えになりそうだ。

 防御率1点台を誇った右腕とのマッチアップは意外な結末を迎えた。2回に高卒4年目の増田陸に右中間への先制適時二塁打が飛び出し、3回は岡本和が16号2ラン。5回は吉川が二盗、三盗を決めるなど塁上をかき回し、決定的な5点目を挙げた。

 盗塁だけでなく、先制打の増田陸や2年目の中山はバットを短く持つなど速球対策を講じた。原辰徳監督(63)は「球が速い素晴らしい投手である認識は、みんな個々にあったと思います。非常に若い選手が食らいついていったところが火をつけたようなね」と奮闘をたたえた。

 この日はどうにか攻略に成功したが、以前から指揮官も「あまり戦いたくない投手ですね」と評していたように、佐々木朗が球界屈指の逸材であることに変わりはない。それだけに、対戦前から球団内でも苦戦を予想する声も聞かれた。そんな中、球団関係者の一人は「完璧にネジ伏せられるようなら、秋にはまたあのマシンが出てくるかもしれませんね」と苦笑いを浮かべていた。それは「160キロマシン」の異名をとる超高速打撃マシンのことだ。

 巨人に初登場したのは、第2次原政権だった2014年の秋季練習。150キロ超の直球に差し込まれたり、力負けしたり…と速球に弱かった打者陣のレベルアップを図ることが目的だった。150キロ以上の直球を投げる投手は珍しくなくなり、速球対策は不可欠。ただ、この怪物マシンには〝副作用〟もあった。

 あまりの球の速さに野手陣は大苦戦…。打撃の始動を早めるなどの対応が求められ、マシンを攻略するために打撃フォームそのものを崩す選手が現れたほどだった。19年の秋季キャンプ中に復活したのが最後で、この時もやはり凡打の山を築いていた。

 前出関係者は「〝佐々木朗希仕様〟で170キロマシンになるかもしれませんよ」と冗談めかしていたが、創意工夫の末に増田陸が仕留めたのは161キロの直球。4回の4点目も丸が157キロをひと振りで右前へ運んだ。常時、150キロを超えた直球に対してG打線の空振りは何とゼロだった。

 生身の怪物を攻略した今、もはやモンスターマシンが出動する必要はないだろう。難敵の佐々木朗を打ち崩したナインは別の意味でも安堵しているかもしれない。