【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】甲子園という舞台で盛り上がるキーワード。藤浪VS森。大阪桐蔭OBの対戦が聖地で実現した。2日の阪神―西武、8回二死無走者の場面だ。「5番キャッチャー森」と場内にコールされると、スタンドからこの日一番の拍手がわき起こった。

 勝負は1球で決まった。初球、藤浪晋太郎投手(28)の内寄り低めの159キロ直球を森友哉捕手(26)がフルスイング。痛烈な打球は右翼線を破る二塁打となり、1学年後輩の元女房が二塁に達すると再び球場が大歓声に包まれた。

 3年前、2019年の同じ時期、甲子園で森を取材したことを思い出した。6月21日の阪神―西武の試合前、当時は二軍調整中だった藤浪について質問した。

 先輩の状況を気遣いつつ「藤浪さんらしさをなくさないような形で、本来の舞台に戻ってきてほしいです」と言葉に思いを込めていたのが印象的だった。

 さらに「時間がかかってもいいので、思い切って力で押していく投球スタイルを変えてほしくないです」とも話していた。その希望を乗せた言葉通り、3年後の対戦では真っ向勝負で森に軍配が上がった。

 3万2831人が集まった甲子園。力と力のぶつかり合いにスタンドは沸いた。藤浪は続く先輩の中村剛也(38)ともオール直球勝負。右飛で1回を無失点に抑えた。

 ぜいたくを言えば上位争いを演じるしびれる場面での対戦が見たかったが…。それはもう少し未来の楽しみにとっておくとしよう。

☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。