日本ハムの新二刀流・上原健太投手(28)が1日の広島戦(マツダ)に先発し、打者としては3打数無安打ながら、6回4安打無失点で5―1の勝利に貢献した。

 沖縄出身ながら、高校3年間を過ごした広島で2年ぶりの白星を挙げた上原は「今日はほとんどの球種でストライクを取ることができた。真ん中に集まることなく、うまく散らばってくれたことが良かった。何よりも今日は、楽しんで投げることができて良かったです」と安堵。先発としての役割を果たした89球を振り返った。

 ポイントになったのは、勝利投手の権利のかかった5回二死一、二塁で代打・堂林を迎えた場面。フルカウントまで粘られ最後はチェンジアップで泳がせ空振り三振を奪ったが、その裏ではベンチ―マウンド間でこんなやりとりがあった。

 フルカウントから捕手・宇佐見から出た「チェンジアップ」のサインを見た上原が、一度マウンドを外した。上原によると「チェンジアップのサインが出てちょっと迷いがあったので、いったん外して、もう一回出るならいこうと。ちょっと迷ったら嫌なので納得して投げるためにひとつ間をあけた」と理由を語った。

 このサインを出したのは新庄監督。ビッグボスは「チェンジアップは腕も振れていたしバッターのタイミングをずらしていた。打っても、ポテンヒットにしかならないスイングをさせていた」とその根拠を語りながら、5回終了後には、すぐに上原の元へ駆け寄り「(動揺させて)ごめんね」とわびを入れたという。

 今季から取り組む二刀流は打者の方で「課題はいっぱいありますし、もうちょっと時間がかかるかな」という上原だが「打者心理を少しでも理解できていることで、投げる方にすごくいい影響が出ている」とも。

 投打とも大谷クラスのエリートレベルではないが、上原の新二刀流は周囲の助けを借りながら確実な前進を見せている。