金言を胸に戦っている。ソフトバンク・柳田悠岐外野手(33)が1日の巨人との交流戦(東京ドーム)で汚名返上の一打を放った。前日の同戦ではプロ野球ワーストタイの1試合5三振。「普通なら代えられるけど、それだけ期待してる選手やから」と送り出した藤本監督の厚い信頼に結果で応えた。

 3―1で迎えた5回一死満塁の場面だった。前夜はことごとく好機でバットが空を切り続けたが、初球を捉えて左中間を破る走者一掃の適時二塁打。試合の流れを決める一打に、塁上では思わず右手を突き挙げた。

「(昨日は)しょうがねえかなと思いながら。今日はしっかりボールを見ていきました」

 名誉挽回に成功した主砲に、指揮官は「引きずるタイプじゃないんでね。そこが彼のいいところ」と、どんな時も一喜一憂しない精神面の安定をたたえた。

 レギュラーに定着した2014年以降、好成績を重ねてきた大きな理由の一つに〝切り替えのうまさ〟がある。柳田が強い影響を受けた人物がいる。14年から2年間ともにプレーしたアジアの大砲・李大浩(39=韓国ロッテ)だ。15年のシーズン開幕直後、李大浩は絶不調だった。

「打てない日がずっと続くのに、そういう時ほどめちゃくちゃ明るい。後ろ向きなことは言わんし、周りにも見せない」(柳田)

 気になって直撃すると、今の柳田を形成するに至る金言を授かった。

「俺らは明日も試合があるだろ? この仕事は今日ダメでも次の日に取り返せるんだ。明日打ったら、みんな今日のことは忘れるさ。だったらもう、明日に気持ちを向けていくべきだろ」

 ドッシリと主軸に座る男の矜持に触れ、ゲームセットと同時に良くも悪くも、李大浩の口癖だった「また明日」の精神が染みついた。

 打とうが打てまいが落ち着いた主砲の姿を見れば、チームに無用な気遣いは生まれない。それがシーズンを通して、ムードの良さにもつながる。偉大な先輩の言葉が血となり骨となり、柳田の今がある。