涙のワケは――。ソフトバンクが26日のDeNA戦(横浜)に1―5の逆転負け。初回にルーキー・野村勇の4号ソロで先制したが、以降は相手投手陣の前に打線が好機はつくるもののあと一本が出なかった。

 印象的だったのは、先発した最速160キロ右腕・杉山一樹(24)が見せた「悔し涙」だった。4回は牧、5回は佐野にそれぞれソロを被弾。5回3失点で2敗目を喫した。あまり喜怒哀楽を表に出さない右腕だが、降板後のベンチではタオルで顔を覆い涙を浮かべていた。「いつも野手の方に先制点をもらっているにもかかわらず、試合をつくることができていない。チームに迷惑をかけてしまい申し訳ない」。言葉以上に悔しさがにじんだ。

 感情があふれ出たのはなぜだったのか。試合後、藤本監督は「今、DeNAで誰を注意しないといけないかは分かっていたはず。結局(3連戦で)佐野、牧、宮崎に打たれた」。ホークス投手陣は初戦でも佐野、2戦目も牧に被弾。宮崎にはマルチ、猛打賞と快音を重ねられていた。この日の杉山の2被弾で、チームとしては相手キーマンに「完敗」を喫した形。杉山は前回の西武戦で打撃絶好調だった山川を攻略してミッションをクリアしていた。今回も当然、DeNAの主軸を警戒。そこに〝チーム全体としてやられたくない〟という思いも背負ってマウンドに立ったが…。思い描いた結果と違う現実に、自然と涙がこぼれた。

 それでも決して弱い姿には映らなかった。チーム内からは「内容もそうだし、将来が楽しみになる姿を見せてもらった」との声が上がり、指揮官も「いい球をゾーンに投げられている。十分です。徐々に段階を踏んでいるし、そのうち素晴らしい投球をしてくれるはず。悔しさが次に出てくれればいい」と敗戦にもかかわらず、杉山の話題には言葉が弾んだ。鷹の大器が流した涙に、周囲は確かな成長を感じ取っている。