巨人は22日の阪神戦(甲子園)に投打で精彩を欠き、0―4で屈辱の完封負けを喫した。ただ、故障者が相次ぎながらも24日からの交流戦を前にリーグ2位でフィニッシュできたのは、原辰徳監督(63)による手腕も大きい。いわゆる「原マジック」もさく裂させながら急場をしのいだ一方で、グラウンド外での手腕も高く評価された序盤戦となった。

 先発した高橋が2回途中4失点(自責3)でKOされ、打線は相手を上回る8安打を放ちながら無得点。試合後の原監督は「(高橋)優貴は悪くないよ。投げてもらった私の責任よ」とし「これだけファンに集まってもらってね。もう少しドキドキするようなゲームをしないといけませんね」と攻撃陣に奮起を促した。

 リーグ戦は小休止となるが、49試合を消化して28勝21敗の貯金7。一時は、攻守の要の坂本と吉川の二遊間コンビとエース・菅野まで欠いた。そんな苦境でも2年目の中山らでどうにかやりくりし、中田にプロ初の犠打を命じて劇的な一発を〝誘発〟するなど原采配も随所で威力を発揮した。指揮官は「少しでも貯金ができたというのは、悪い材料ではないですね」と締めたが、そのらつ腕ぶりはグラウンド外で高く評価される一件があった。ちょうど前回の甲子園遠征中の出来事だ。

 4月17日の阪神3連戦3戦目を前に、原監督は滞在先の宿舎からTBS系「サンデーモーニング」にリモートで生出演。公式戦、しかもデーゲーム前に出演するのは異例だったが、まずMC役の関口宏氏から向けられたのは「シーズン中にテレビ出ていいんですか?」という質問。指揮官は戸惑いながらも「〝関口さん命令だ〟ということで、私もはせ参じることにしました。ファンあってのプロ野球ですから」と切り返した。

 さらに、虎党まで巻き込み、野球ファンの怒りを買ったのがこの発言だった。

「監督。〝あの阪神〟に負けていますが」(関口氏)。当時の阪神は開幕9連敗を喫するなど、歴史的失速ばかりが取りざたされていた。そんな中で巨人は同カードで初戦から2連敗。ネット上を中心に「『あの阪神』ってどういうことや!!」などと大荒れとなった。ただ、原監督は「差はないんです!」と繰り返し強調し「ジャイアンツも接戦の中でそこそこの成績。タイガースも接戦の中での現在の成績」とした。

 一連のやり取りに、プロ野球OBは「関口さんは野球ファン以外の人にも分かるように、あえて素人のような聞き方をしたのかも」とした上で「番組側でオファーしておいて『出ていいんですか?』はない。原監督も朝っぱらから気分が悪かったと思うけど、対戦相手のチームとそこについているファンの感情を考えたら満点の返し。タイガースファンも普段は〝原巨人憎し〟でしょうけど、あの時ばかりはどちらのファンの溜飲も下げたと思う」。

 かねてトーク力の高さは球界屈指だが、絶対に相いれない両伝統球団のファンを巧みな話術で一時的にでも〝融解〟させたのはおそらく史上初。原監督の巧妙さは采配面だけではない。