開幕直後の「投壊」がウソのようだ。阪神は先発・伊藤将司(25)が8安打完封で、22日の巨人戦に4―0で快勝した。4月22日のヤクルト戦から続いた投手陣の連続3失点以内の記録は20日に「21」で途切れたが、この3連戦も30イニングでわずか7失点。依然、好調であることを示した。

 そもそも今季は最悪の船出。開幕9連敗時には計54失点、チーム防御率は5・85で、そんな〝どん底〟から4月までに3・56、5月21日には、ついに2点台に突入した。

 開幕時は不安定だったブルペン陣が徐々に安定。抑えに岩崎、終盤7~8回にアルカンタラ、湯浅が定着すると、17試合で防御率1・76の6年目・浜地や虎移籍2年目の加治屋は10試合、4年目の斎藤は8試合連続無失点中と「勝ちパターン」の面々ではないスタッフたちも絶好調だ。

 劇的なV字回復には一体何があったのか。昨季までの守護神・スアレス(現パドレス)が抜け、開幕直後は誤算続き。ブルペンを束ねる金村投手コーチはその9連敗の最中、当時の状況と相反するワードで鼓舞した。そのフレーズは「ここ、抑えたらおカネになるぞ」だ。

「少しイヤらしい表現だけど。『チームのためにとかいらない。自分のために、自分の家族のためにやろうぜ』って。その結果、抑えることができたらチームのためになるんだぜって」。プロの世界では当然とも言える〝競争原理〟を最もシンプルな表現を用いて、奮起を促していた。

 いち早く〝化学反応〟を見せたのが6年目の24歳・浜地だ。「投げるたびに『もう、楽しくてしょうがない』って言ってて、それが周りにも波及した。斎藤、京己(湯浅)、加治屋とね。だから今、ブルペンはすごく明るいし毎日、盛り上がってる(笑い)。いい意味でいい競争ができてる。浜地が(故障で)いなくなって、今はそこを加治屋が務めているけど、いなくなった人のポジションを『そこ、俺だろ』みたいに、常に取り合いする雰囲気が出てて、互いに刺激し合っているから」。低迷中のチームにあってもブルペンは連日、活気にあふれているという。

「グラウンドには銭が落ちている」。投手陣の意識の高まりが虎の〝反攻ムード〟の支えとなっている。