コロナ前のようなシフトだった。ソフトバンクの絶対エース・千賀滉大投手(29)が、20日のロッテ戦(ペイペイ)で「令和の怪物」・佐々木朗希投手(20)と2度目の直接対決。結果は4回4失点の今季最短KOで2敗目を喫し、悔しい登板となった。「野手の皆さん、キャッチャーの(甲斐)拓也に本当に申し訳ない」。降板後のコメントにふがいなさがにじんだ。

 NPB最高峰の「投手戦」が予想された。早ければ今オフにも海外FA権を行使してメジャーの「市場」に出る右腕が、いやが応でもアドレナリンの出る試合でどんな投球を見せるのか、海の向こうではそんな関心があったはずだ。試合前には近年、日本では目にしない光景があった。1人、また1人と大柄の外国人が球場に入ってくる。日本に常駐している駐日スカウトではない米国からはるばるやってきたメジャー球団の編成幹部らだった。ドジャース、レッドソックス、カブス、レンジャーズの4球団の担当者が視察。まだ入国制限がある中で、うち3球団が編成担当者ら複数で視察するというコロナ禍では超異例とも言える態勢だった。

 千賀は前回の日本ハム戦で自己最多に並ぶ14奪三振。日本の球場では、傾斜や硬さがメジャーのマウンドに近いとされる札幌ドームでの快投だった。そこからの佐々木朗との投げ合い。メジャーの関心を引きつけるのは必然だった。

 ただパフォーマンスとしては、試合後に藤本監督が「真っすぐを全然投げていなかった」と語ったように剛球は鳴りを潜め「本人の中で思ったように真っすぐが〝来ていない〟ということで変化球が多めになった。やっぱり真っすぐを投げないと変化球も生きてこない」と本来の投球からは程遠かった。先月14日に3勝目を飾って以降、各球団のエース級との対戦も多く白星から遠ざかっている「世界の千賀」。心身ともに辛抱の時間が続く。