先日、日本プロ野球選手会から、今季の年俸調査結果(外国人選手を除く支配下選手が対象)が発表された。

 平均年俸ではソフトバンクが7002万円で3年連続トップ。最下位・日本ハム(2817万円)の約2・49倍で全体平均は4312万円だった。

 注目されたのは選手会が付帯資料として公開した「契約更改満足度調査」。2021年オフの契約更改について行ったアンケート結果を集計したもので、満足度1位はそのままソフトバンク(55・07%)だったのだが、全体2位の巨人(平均6632万円)が満足度ではワースト2位の23・68%、同3位の楽天も10位(26・56%)だったりと、必ずしも「平均年俸の高さ=満足度」とならない内部事情があるようだ。

 では、いったい選手側が受け取る満足度の基準とは何か。ひとつの傾向が平均年俸では4位(4330万円)ながら満足度では2位(54・72%)に上昇する西武や、同じく7位(3732万円)から3位(48・21%)に上がるDeNA、また8位(3693万円)から4位に上がる広島といった経営規模の大きくない中堅球団のあり方だ。

 例えば西武では、19年にシニアディレクター(SD)からゼネラルマネージャー(GM)に昇格した渡辺久信GM(56)の高いコミュニケーション能力に付随する言葉の力が選手の不満を中和する役割を担っているとされる。

 それまで、フロントの言葉の掛け違いで、選手が態度を硬化させ契約更改が球団との〝闘争の場〟ともなっていた時代がある。

 これまで、西武が12球団最多のFA流出選手を出している現実とも決して無縁ではないだろう。その時代に共通していた選手側の捨て台詞は「自分が本当に必要とされているのか分からない」だった。

 限りある予算の範囲内で球団運営をしていくフロントの心労はもちろんある。それでも選手と直接顔を合わせる交渉の場で「1年間お疲れさま」「お前がいてくれて本当に助かったよ」「今回の減額分は来年きっちり取り返してくれ」など、現場目線の言葉で血の通った会話をしてくれるフロントがいれば、たとえ交渉の余地がゼロだとしても選手側の態度が硬化するようなことにはなりにくい。

 平均年俸自体は上位でなくても、選手側の更改満足度の高い球団には何らかの形で選手と血の通った会話ができる〝交渉人〟の存在があるような気がする。