今こそプロ20年戦士の神髄に注目したい。ソフトバンク・和田毅投手(41)が5日のオリックス戦(ペイペイ)で5回3安打1失点の好投でチームの3連勝に貢献。初回の三者連続三振を含む7三振を奪い、白星はつかなかったが、今季4度目の先発で貫禄を示した。

 日米通算148勝を誇る大ベテラン。勤勉で研究熱心な左腕と言えば、クレバーなイメージがとにかく強い。相手打者との勝負だけでなく、常にグラウンド内で起こり得る事象を念頭に広い視野で戦っている。それが同じプロや大学生、高校球児などから尊敬と憧れを抱かれる理由だ。

 ロッテ・佐々木朗と白井球審の間に起こった〝詰め寄り騒動〟が世間の大きな話題となったが、今回のような騒動と最も縁遠い選手だろう。和田は試合中、ベンチの行き帰りの際によく審判と絶妙なコミュニケーションを取ることがある。以前、マウンドでの自身の振る舞い、流儀をこう明かしていた。

「審判との相性というのはすべての野球選手にある。お互い人間なんで。それも野球の要素。判定で『ストライクなんじゃないかな』って思うこともある。僕だって顔に出ているはず」と自戒を込めながら、審判との向き合い方については…。

「そういう時は、僕の場合、コミュニケーションを大事にしている。確認っていうんですかね、抑えてベンチに戻る時に『さっきのボールどれくらい外れてますか』『さっきのは低いですよね』という聞き方をする。機械ではないんで、審判の主観でどれくらいボールなのかなってことは聞いてもいいと思っている。審判の方も『あと半個分』とか言ってくれるんでね。そしたら『わかりました』と。あとはそういうイメージで投げようと。お互いゾーンの確認になる。一生懸命だから、顔に出たり態度に出たりするものだけど、試合で投げている以上はアジャストすることが最優先」

 ベンチへの行き帰り、試合が止まることはない。時間にして数秒のやりとり。リスペクトし合っているからの光景だ。長いキャリアもあり球審の特徴は頭に入っているが、気候条件であったり、昼と夜の違い、球場の違い、選手と審判それぞれの体調によっても微妙な違いはある。だからこそ「いつもとなんか違う」という違和感がフラストレーションになる。それをコントロールしてこそ「プロ」。できなければ勝ち続けられない。和田が「クレバー」と呼ばれる理由は確かにある。

 チーム内で和田は精神的支柱であると同時に、若手からの相談が絶えない選手でもある。それは百戦錬磨で「野球」を知っているからに違いない。