阪神が24日のヤクルト戦(神宮)に11―3で快勝した。矢野燿大監督(53)は2カードぶりの勝ち越しに安堵の表情で、この日は采配だけでなく、ベンチでは自らが動いた。

 停滞ムードを変えるべく、買って出たのは本塁打が出てベンチで出迎える際、選手に「贈呈」がお決まりになっている「虎メダル」のプレゼンター役。この日は初回に佐藤輝明内野手(23)と中野拓夢内野手(25)が2ランを放ち、指揮官はプレーボールから大忙し。終盤には小幡竜平内野手(21)のプロ初本塁打も飛び出て計3度〝任務〟をこなし「多少でもムードが上がるなら俺もやりたいし。まさか3回もできるとは思ってなかったけど。どんどん、ナンボでもやります」とご満悦だった。

 試合前の時点で4勝20敗1分け。球団史上最速ペースで負け続け、首位とのゲーム差も13・5と過去の逆転Vにおけるリーグの最大ゲーム差(08年・巨人)の限界水域すら超えた。それだけに、いても立ってもいられなかったのか。

 これまではナイン主導で行っていたルーティン。その輪のなかに〝一歩〟踏み込んだ監督のアクションは、それはそれで今後の勝敗次第で反響を呼ぶ可能性もある。だが「勝てば何も言われなくなると思う。今、阪神が何かといろいろ、言われるのは、これだけ負けてるから。どのチームでもそうだと思うけど監督が言うことは基本『絶対』だから」と話すのがあるパ球団の編成幹部だ。

 引き合いに出したのが新庄ビッグボス率いる日本ハムだ。

「日本ハムもキャンプで武井壮さんとか、室伏広治さんとか異業種競技の人を呼んだ。今は何も言われていないけど、今後の勝ち負けや出て来る数字次第で『成果は?』って検証されることもある。それでも監督が『よかれ』と思ってやったこと、言うことは『絶対』。最終的には責任を取る立場だし、監督が自分の思ったことを行動に移すことは、悪いことじゃない。それだけ監督という立場は重いということ」

「結果」がすべてのプロの世界では、そのプロセスも「勝てば官軍」。新たに〝事〟を起こした虎の指揮官のアクションは果たして、勝利の新儀式となるか。