もう一度出直しだ。巨人は22日の中日戦(バンテリン)に7―2で快勝し、連勝を5に伸ばした。投打がガッチリとかみ合ったが、この日から静かに戦列を離れていたのが打撃不振に陥っていた中田翔内野手(33)だった。原辰徳監督(63)によると首に不調を抱えていたというが、中田のド根性ぶりとひたむきな姿勢には称賛の声が上がっている。

 好走塁で流れを引き寄せた。1―1の4回二死一、三塁で巨人ベンチは一走のウォーカーに盗塁のサイン。相手捕手が二塁に送球した間に三走の丸が本塁を陥れ、勝ち越しに成功した(記録は重盗)。主導権を握り、6回には竜エースの柳に打者一巡の猛攻を浴びせて4得点。大量援護に守られた菅野も7回1失点の粘投で3勝目をゲットした。

 足で試合を動かしてつかんだ今季2度目の5連勝。原監督は重盗劇を「たまたま」と煙幕を張り、元木ヘッドは「ウォーカーは走らせたよ。選手が個々にみんないい判断をしてくれた。素晴らしい」とたたえた。

 その歓喜の輪の中に背番号10の姿はなかった。中田はオープン戦から好調を維持し、開幕時は5番に座ったものの、出場した23試合で打率1割8分8厘、2本塁打、8打点に低迷。くしくも33歳の誕生日だったこの日、出場選手登録を抹消された。

 原監督は「なんか首の状態があんまり良くないらしい。せっかくいい(状態で)キャンプからオープン戦とやっていたからね。もう一回仕切り直そうと。明らかにコンディション、状態がいいというスイングではない」とし、期限を設けずに再調整させる方針を明かした。

 巨人加入後では3度目のファーム降格。ただ、中田の〝プロ魂〟を絶賛する声は根強い。チーム関係者の間には「あれだけ自打球を当てていても〝痛い〟だの〝かゆい〟だのを言わない。実績も十分すごいけれど、打てなければ誰よりも黙々と練習する。レギュラー、ましてや4番を張っていた人間があれだけ必死に努力している姿は、若手たちも見習うべきだと思うよ」との声がある。

 確かに春季キャンプ以降、なぜか中田は自打球がスネやヒザにボコボコと当たり続けてきた。しかし〝痛い〟と首脳陣に申告すれば出場機会は失われる。汚名返上を期す今季、中田にとっては口が裂けても言えないフレーズだ。本人も「痛みはもちろんあります。でも、痛いって言ってられない」と悲壮な覚悟を口にしたこともあった。

 そして、今回の首の違和感についても原監督は「弱音は吐かなかった」と明かした。悔しい再調整にはなったが、一軍昇格を狙うヤングGたちには最高の教材となるかもしれない。