松坂獲得の責任問題 王会長「強行説」の真相

2015年06月19日 06時00分

入団会見でポーズを決める松坂(左)と王会長

 9年ぶりに日本球界に復帰したソフトバンクの松坂大輔投手(34)の周辺がキナ臭くなってきた。3年総額12億円プラス出来高(推定)という巨額の契約を結びながら、いまだ一軍での登板機会はなし。かつての国民的スターが一転、不良債権と化しており、激しいバッシングにさらされている。その余波は編成の責任者でもある王貞治球団会長(75)にも及んでおり、このままでは責任問題に発展しかねない雲行き。いったい、松坂問題でのソフトバンクの誤算はどこにあったのか。

 ケチのつき始めは、開幕直前にインフルエンザを発症し、予定されていた“再デビュー”戦の先発が頓挫するというアクシデントだった。その後、右肩の違和感を訴えてノースロー調整に。

 5月20日にようやく二軍戦で実戦復帰したものの、2度目のマウンドとなるはずだった5月24日のウエスタン・広島戦を登板直前に緊急回避。再びリハビリ生活に逆戻りした。そこから1か月がたとうというのに、いまだブルペン入りも再開できていない。

 投球フォームの課題も解決されておらず、もはや前半戦での復帰は絶望的。先発の頭数が揃っているチーム事情と松坂の現状を考えれば、今季中の一軍登板さえ容易ではない。さらに言えば、現時点では復活の見通しすら立っていない。

 今や完全に逆風だ。単年4億円の高額年俸ということもあって、日本を2度のWBC制覇に導いた国民的スターが、ネット上を中心に厳しいバッシングにさらされている。ネット世論の“声”は獲得したソフトバンク側、さらにいえば、編成の最高責任者でもある王会長にまでも及んでいる。どうしてこうなったのか。

 今回の補強に関して、王会長が矢面に立たされている格好だが、松坂獲得の経緯は「王会長が欲しがって動いたものでは決してない」(チーム関係者)という。キャンプ前のテレビ番組で「10人中8人は反対だったが…」。王会長がこう漏らしたことで、そこを自らの会長権限で“強行突破”したかのようにとらえられているが、実際は王会長も8人のうちの1人だったのだ。

 王会長が心配していたのは、松坂加入によりチーム内の年俸面などのパワーバランスが大きく崩れること。しかも、王会長が日本一奪回を目指しての1年限りの特例措置と位置づけて、FA2選手、国内助っ人4選手を大補強したのが前年オフのことだ。

 では、どうして松坂を獲得することになったのか。鷹フロントは、この事態を全く想定できていなかったのか。ある球団関係者は「まさか一度も投げずに1年目が終わるかもしれない、ということは別にして、ソフトバンクという球団である以上、松坂大輔というスター選手が市場に出てきたのに動かないという選択肢がなかった、ということですよ」という。

 孫オーナーは、年俸が何十億円になったとしても採算が合えば構わないとして「トップクラスのメジャーリーガーを獲れないのですか?」と球団フロントに投げ掛けたことがある。実際は米国を捨ててまで日本球界でのプレーを希望する主力クラスはいないが、補強への対価を惜しまない方針だ。

 そんな中で日本一連覇を狙うオフに獲得可能となったのが松坂だった。現状の松坂では4億円に見合った活躍ができないかもしれないことは、それこそ「10人中8人」が覚悟していたはず。ただ、水面下では、ほぼ同条件でDeNAもアタックしていた。青天井の補強費を約束された球団として、知名度も含めてオーナーの“意向”にこれほど完全合致した選手はいない。まさか他球団に流出させるわけにはいかなかったというわけだ。

 4億円に見合わなかったのは、ある意味で想定内だが、オープン戦中にチーム内でささやかれた「10勝前後ならできるのでは…」との見立てさえ、今や絵に描いた餠。不在でもチームが好調というのがまた寂しい。