【赤坂英一 赤ペン!!】開幕3戦目に初登板初先発し、なかなかの好投を見せた巨人のドラフト3位新人・赤星優志(日大)。惜しくも初勝利は逃してしまったが、私と同世代の“桑田ファン”からも注目が集まっている。

 一番の理由は、赤星が投げるカーブにある。これ、キャンプで桑田投手チーフコーチ自ら赤星に教え込み、伝授してきた“伝家の宝刀”なのだ。

 桑田コーチはキャンプでキャッチボールの相手に赤星を指名。現役時代の持ち球だったカーブを受けさせ、いかに有効な武器になるかを説いた。

 赤星はもともとカーブが得意ではなく、「大学ではあまり投げていなかった」そうだ。が、桑田コーチに説得されて習得に励み、どうにか使えるようになったのが、20日のオープン戦最終登板。

 桑田コーチによれば、このときの赤星は「ブルペンでは今年一番調子が悪かった」。が、「そういう状態でも、カーブをうまく使い、6回1失点で粘れたところに非常に収穫があった」という。

 とくに走者2人を背負って楽天・浅村を空振り三振に仕留めたカーブは絶品。「カーブを決め球にもカウント球にも使えれば、調子が悪いなりにゲームをつくれるということです」と桑田コーチも赤星を評価していた。

 しかし、本番の開幕3戦目では、中日・阿部にカーブを狙われてソロ本塁打。赤星のカーブは、まだ本当の意味での勝負球にはなっていない。

「そもそも、桑田さんのカーブは他の投手と比べても別格だった」と桑田投手と対戦した元強打者は、こう言っている。

「大きく縦に曲がって、他の投手よりも2~3球分、遅く来る感じ。それだけブレーキがかかるとタイミングを合わせられない。合わせようとしてバットを振ったら、もう目の前を通過している。いい時の“桑田カーブ”はまず打てなかったな」

 私が思い出すのは2004年、巨人キャンプの紅白戦だ。桑田の直球の平均速度が130キロ台に落ちていた当時、109キロカーブで清原を見逃し三振に仕留めた。桑田は「もう真っすぐだけでは打ち取れませんから」と謙遜しながら、「でも、カーブを使えば」と有効性を強調。その後3年間、現役を続けたのだった。

 もっとも、それだけのカーブを他の投手が習得するのは至難の業。「何とかまねしようと思い、桑田さんにも教えてもらったけど、結局あきらめざるを得ませんでしたよ」ともらした他球団のエース投手もいる。桑田コーチに見込まれた赤星のさらなる努力に期待したい。 

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。