【赤坂英一 赤ペン!!】鈴木誠のメジャー挑戦で広島の外野に一つ空いた穴は誰が埋めるのか。もっか大いに存在感をアピールしているのが、ドラフト6位の長距離砲、末包(すえかね)昇大(25=大阪ガス)である。

 キャンプ終盤の紅白戦や練習試合で連日4番に抜てきされ、3戦連続でマルチ安打をマークすると、先月26日の巨人とのオープン戦では待望の“プロ1号本塁打”も放った。

 最大の課題は、社会人時代から指摘されている変化球の見極めだろう。昨年12月の都市対抗では、初戦で東京ドームのバックスクリーンに本塁打したが、2回戦では4打席連続外角への変化球で三振に打ち取られた。

「プロに行ったら、変化球、ボール球の見極めをしっかりやってほしい。当てにいくような打撃をしたら、末包が末包ではなくなりますからね」
 とは、大阪ガスの前田孝介監督の指摘である。

 そんな末包に、首脳陣は本職の外野だけでなく一塁も守らせている。私がキャンプを訪ねた21日には、早出で小窪内野守備走塁コーチがノックを行い、背後で東出野手総合コーチが付きっきりで指導。オープン戦でも26日は一塁に入り、27日は右翼を守っている。

 首脳陣としては、末包を一塁でも使えるようにして、外野へもう一枚、“ポスト誠也”の選手をはめ込みたいのだろう。その有力候補が5年目の中村奨成(22)である。

 入団以来、捕手一本にこだわり続けてきた中村奨は、「外野が空くのは分かっていたし、試合に出るチャンスだから」と外野挑戦を決断。日南、沖縄でカープを取材したOB評論家・金石昭人氏によると、「佐々岡監督も中村奨を積極的に使うつもりでいる」という。

「会沢、坂倉がいるから捕手での起用は難しいでしょうが、打撃では去年結果を出した(39試合、打率2割8分3厘、2本塁打、5打点、3盗塁)。やっと自分が考えた通りの打球が飛ばせるようになって、プロ野球選手になったな、という印象がある。本番で使えばさらに伸びるんじゃないか」

 ただし、首脳陣が中村奨に捕手を断念させたというわけではない。キャンプ中は捕手の特守にも取り組み、倉バッテリーコーチの転がした球を素手で捕ったり、ワンバウンド捕球を繰り返したり。「頑張れ、俺!」と大声で自分を励ましている姿が印象的だった。

 昨季はレギュラー捕手の坂倉も62試合(先発57試合)で一塁を守った。中村奨と末包は開幕したらどこを守るか、そういう興味を持って見るとより面白い。

 あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。