【魔改造の手腕・番外編】ミスタードラゴンズ・立浪監督を迎え、新体制となった中日。そのスタッフに新たに加わった大塚晶文投手コーチ(50)に恩師から直言が届けられた。

 言葉の主は今月上旬まで本紙連載「魔改造の手腕」を執筆した久保康生氏(63)。大塚コーチにとって近鉄時代の師匠にあたる同氏から、愛弟子に熱いメッセージが贈られた。

 大塚コーチが入団会見を行ったのは1月14日。中日渉外担当としての業務に区切りをつけ米国から帰国後、隔離期間を経て公に言葉を発した。その後、師匠に報告の電話を入れた際、1時間ほど会話を交わしたという。

 久保氏が伝えた内容はこうだ。

「周りの意見を気にしすぎ、尊重しすぎると仕事がはかどらない。自分が能動的に動くことが大事。他のコーチの顔色をうかがって、調和を取らなきゃと思いすぎたらダメ。いい仕事ができなくなる」

 素直で優しい性格。若手時代から大塚コーチを知る、久保氏ならではの言葉だった。

 プロ野球の現場は個人事業主の集合体。それぞれに強烈な個性がしのぎを削る。ただ、勝利のためには調和も必要。「和して同ぜず」。バランスを取りつつ自我を出せということが久保氏の趣旨だ。

 大塚コーチは2015年に一度、中日の二軍投手コーチに就任。16年はチーム事情で一、二軍を行き来する配置転換もあった。その後は渉外担当として渡米。コーチ解任となったわけではないが、実績があるわけでもない。

 ここでのキャリアが指導者としての正念場となる。だからこそ、久保氏の言葉はさらに熱を帯びる。

「自分の(色の)投手陣にしてしまうというくらいのスキルと熱意、情熱がないとなかなか選手は作れない。自信を持ったコーチでないと選手はついてこない。こうしたら、絶対にこうなるからと言い切らないと心をつかめない」

 中日は昨季、チーム防御率1位を誇る投手王国。そのブルペンを預かる重圧は計り知れないだろう。

 就任会見では「選手には自分の好きなように、100%の力を出してもらいたい」と話した大塚コーチ。元来の素直さと優しさに加え、久保氏からの助言を胸にどんな投手コーチとなっていくのか。その手腕に注目だ。