気概ある若鷹の出現に「世界の王」もニッコリだ。今年から特別チームアドバイザー兼務となって〝現場復帰〟したソフトバンクの王貞治球団会長(81)は選手に「ドンドン来てほしい」と門戸を解放してきた。13日にキャンプ地を一時的に離れたが、実際に訪ねてきた選手が1人だけいたという。

 第2クールでのこと。B組(二軍)の練習を見に来た王会長に「インコースって、どう打てばいいですか?」と質問を投げかけたのが、昨季育成から支配下登録に昇格した期待の若手・渡辺陸捕手(21)だ。187センチの大型捕手で打撃力に定評がある。以降、何度かにわたる熱い直接指導が実現したのは、その貪欲な姿勢によるものだった。

 王会長は「あれだけ選手がいる中で、一番最初に自分から問いかけに来た選手ですからね。今年にかける気持ちというのが、そこに表れてると思う。彼はバッティングがいい。肩もいい。できたら、もっともっと出場機会を増やして経験を積ませてやりたい。やっぱり長打力があるのは魅力ですよね。期待してます」と、うれしそうに話す。

 おそれ多いという思いか、遠慮なのか、他の選手は「行こう」としなかった。渡辺陸も「(前もって聞きに行こうと)決めていたわけではなかった」そうだが、王会長の姿を見て「瞬間的に」決心したという。特に緊張することもなかったそうで「『何でも聞きに来い』と言っていただいていたので行きやすかったです。行って良かったです」と笑顔を浮かべた。

 その渡辺陸は12日の紅白戦でA組(一軍)に呼ばれ、右中間席へのアーチで王指導の成果を見せた。オフの自主トレは中村晃のもとで行い「身体能力が高い。バットを振る力、投げる肩の強さは(栗原らも含め)この中でナンバーワン。どういう選手になるか楽しみ」と評価された。ここからサクセスストーリーが始まるのか、楽しみだ。