ソフトバンク・東浜巨投手(31)が5年越しの「魔球」習得に励んでいる。宮崎春季キャンプの11日、V奪回のキーマンに挙げられる10年目右腕がB組シート打撃に登板。打者6人を相手に安打性2本、最速147キロという内容だった。

 マウンドを降りた後、東浜の表情は明るかった。理由は最後の18球目に投じた新球にあった。牧原巧を空振り三振に斬ったボールは、習得中のチェンジアップ。右腕は降板後すぐに打撃センスに定評のある後輩を呼び寄せ〝事情聴取〟。「真っすぐの軌道だと思って振りにいきました」(牧原巧)。返ってきた答えに手応えは一段と増した。「自分がイメージしているボールが投げられている。大枠はだいたいイメージがついてきた。あとは細かい調整をしていきたい」。
 
 16勝をマークして最多勝のタイトルを獲得した2017年のオフだった。「この先、目をつけられるからシンカーだけに頼ると苦しい。奥行きを出したいと思った」。勝ち続けるために新球挑戦を決意。だが「コンディションがなかなか整わなくて、そこまでたどり着けないことが続いた」。今オフ、満を持して本格挑戦。打者相手に投げるのはこの日が初めてだった。コーチを含め周囲には一切伝えず、どんな反応をするのかを試すためだった。思いのほか好反応だったことも、習得意欲をさらに高めている。
 
 球界内でチェンジアップを得意とする投手の球を動画などで研究し、イメージを膨らませてきた。「理想」に掲げたのは、上沢直之と金子千尋(ともに日本ハム)。東浜は2人のボールを「魔球」と呼ぶ。鷹の主砲・柳田はかつて最も苦にする投手として金子を挙げたことがあった。「それが理想ですね。そういうのは(動画で)見たりします。あの球はすごい魔球。バッターは本当にストレートだと思って『ボールが来ない』って感じだと思う。(自分も)落ちるっていうよりも球速差で何とかしたい」。
 
 思い描くのは120キロ台のチェンジアップを加えて投球の幅を広げる、だけじゃない。巧打者を欺く快感を覚えた時、キャリア最高の姿が見えてくるはずだ。