【赤坂英一 赤ペン!!】昨季最下位だった西武は、優勝したオリックスのようにどん底から頂点に這い上がれるのか。

 捲土重来を期して練習が続く宮崎・南郷キャンプ。第1クール最終日の4日に足を運ぶと、他球団以上に厳しい感染防止対策が徹底されていた。チームと報道陣や観客の導線を分離。練習後の囲み取材もリモートで、外部との接触を遮断している。

 そんな中で迎えたキャンプ初日、「(去年よりも)寂しいなって感じ」と辻監督は漏らした。「(コロナ感染で)選手が少ない。予定で十数人いるはずの選手がいないわけですから」は間違いなく本音だったろう。

 チームがこういう苦境にあるとき、新たな光明となるのは若く新しい力だ。今キャンプにはドラフトで4球団が1位指名した隅田知一郎(西日本工大)、2位の佐藤隼輔(筑波大)と即戦力左腕の新人2人が一軍の練習に参加。初日と4日目にブルペン入りし、精力的な調整を続けている。

 初日に31球を投げた隅田は、「まず平常心で投げることを意識した」と強調。技術的には「右打者の外角に、シュートして力が逃げない、強い球がいくように。それで力まないようにと考えて投げていた」という。

 3日目には守備練習で声を出して投手陣を盛り上げ、4日目は2度目のブルペンで帽子を飛ばす熱投を見せた。「テーマはストライクゾーンに投げること」で、真っすぐ、チェンジアップ、スライダー、カーブ、ツーシームと計87球。来週からはブルペンで打者に立ってもらい、実戦に近い練習を移っていく予定だ。

 ドラフト2位の佐藤も4日目に70球を投げた。球種は真っすぐ、スライダー、チェンジアップ、カーブ、フォーク。制球にはばらつきがあるが、ボール自体は力強く、「いい球を放っている」と辻監督は評価している。

 佐藤は筑波大で自分のフォームを卒論の題材にしており、この日も背後で撮影されている自分の動画を見てはフォームをチェック。探究心が旺盛なことをうかがわせた。

 昨季の西武はチーム防御率3・94、先発陣の防御率4・16が、ともにリーグワースト。特に先発左腕の不在が弱点と指摘され、隅田と佐藤の両新人サウスポーにかかる期待は大きい。

 辻監督は初日の会見で、「大卒1年目の選手ですからトントン拍子にいろんなことを期待するのは酷」と新人たちを気遣いながら、「昨年の投手陣を考えれば1人でも2人でも戦力になってほしい」と胸中を吐露。若い力が少しでも西武投手陣再建の一助になればいいのだが。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。