門外不出の「王ファイル」がブレーク候補の背中を押している。キャンプイン前日の先月31日に、ソフトバンク・王貞治球団会長兼特別チームアドバイザー(81)は、野手陣にプロで結果を出すための思考や心構えを説いた特製の冊子を配布。昨年暮れに配られた「投手版」に続く「野手版」だった。

 今季ブレークが期待される田中正義投手(27)は、成功をつかむためのバイブルとして「王ファイル」を節目で読み返している選手の一人。相次ぐ故障に悩まされポテンシャルを発揮しきれず、未勝利のまま6年目を迎えた。ただ、昨季は6月以降に一軍定着。救援で18試合に登板して防御率2・16と覚醒の兆しを見せ始めている。

 オフは千賀、石川が行う宮古島での自主トレに志願参加。鷹投の2枚看板から潜在能力を絶賛された。ただ、どんなに高いポテンシャルを秘めていても、マウンドでそれを出せなければ結果は残せない。技術も大事だが、メンタル面の影響も多分にあることを田中は失敗の中で痛感してきた。

 それだけに「結果を生むために、あれだけの成績を残してこられた会長がどういうアプローチをされていたのかは勉強になるし、一つひとつの言葉が心に響く」と勝負の極意がしたためられた「王ファイル」を重宝している。昨年暮れから「投手版」はすでに何度も読み返した。さらに「野手版は配られた日に後輩に借りて、携帯の写真で撮らせてもらいました」。

 先発の一角を狙う今季は「とにかく今はキャンプ、オープン戦でどう結果を残すかってことしか考えていない」と毎日が真剣勝負だ。「これからも何かあった時に読み返すつもりです」。王イズムが足りなかったものを埋めてくれるはずだ。