G投再建を託された巨人・桑田真澄投手チーフコーチ(53)が宮崎キャンプで連日、熱心な指導にあたっている。早大と東大の大学院で理論を固めた同コーチは長年、温めてきたアイデアを次々と実践。若手の底上げに全力で取り組んでいる。そんな桑田コーチの「ネチネチ指導」をライバル球団は警戒。いったいどういうことなのか。

 宮崎キャンプ第1クール最終日となった3日も桑田コーチは大忙し。練習開始前は「S班」がいる木の花ドームを訪れ、菅野、メルセデス、ビエイラら屋台骨を背負うG投たちとコミュニケーションをとった。

 一軍に戻るとキャッチボール中の高橋、高梨に後ろから声をかける〝ささやき戦術〟。ブルペンでは原監督や評論家の松坂大輔氏らが見守る中、堀田、戸郷らの投球をチェックした。

 コーチ就任2年目でチーフに昇格し、G投立て直しが委ねられた。借金1の3位に終わった昨季のチーム防御率3・はリーグ4位。464四球も同じく4位とあって、桑田コーチは制球力の向上をテーマの一つに掲げている。

 精力的に動き回るその姿に、ライバル球団関係者は「昨季、桑田コーチはイニングごとにベンチで投げ終えた投手に声をかけていた。さすがに『回数が多すぎるんじゃないか』と見ていたけど、結局、最後までやり通した。あの〝ねちっこさ〟が最大の強み。投手指導に生かされれば、戸郷ら伸びしろのある若い投手が一気に大化けする可能性はある」と警戒を強めている。

 野球の動作解析を長年研究してきた桑田コーチだが、昨季は補佐という立場もあり「あまり口出しせずにやってました」と抑えていたという。その分、今季は満を持して温めてきたアイデアを次々と実行。制球力向上のため通常より1メートル短い17・44メートルの「桑田レーン」を導入すると、一軍は全員ブルペンの翌日をノースローとする「中1日全員ブルペン制」を採用した。

 桑田コーチの〝粘り強い〟性格は解説者時代から一部では知られていた。特に投手に対して試合中、何度も課題を指摘。あまりのしつこさにファンからは〝拒否反応〟が起こったこともあった。

 宿舎でも同コーチは選手への指導を続ける。自ら講師となり、若手相手に30分間の講義。「若い選手たちなので、知らないことがいっぱいある。変化球は何の目的で投げるかとか。僕は研究していて得意分野なので、自分たちの感覚とそういう科学的データを添えて彼らに伝えるようにはしています」(桑田コーチ)

〝ねちっこい〟は言い換えれば、それだけ野球に真剣に向き合っている証拠。「(一軍に)今いるほとんどの選手が2~3年後が一番いい時になると思う。そこに向けて育てていきたい」と〝教師〟の目で語る桑田コーチ。持ち味の粘り腰指導でヤングGがどう変わるか見ものだ。