名作漫画が生まれる源泉にいた鷹戦士の一人だった――。ソフトバンクの小久保裕紀二軍監督(50)が18日、筑後ファーム施設を訪問。新人合同自主トレ視察後に報道対応し、今月10日に亡くなった漫画家の水島新司さんとの別れを惜しんだ。現役時代は鷹の4番に君臨。現在は背番号90を背負い、ファームの指揮を執る。代表作「あぶさん」で主人公・景浦安武がつけた番号を〝継承〟する男ゆえの熱い思いを語った。

「あそこまでの人はもう出てこない」。水島さんにはあふれんばかりの野球愛を感じたという。それが探求心につながり、不朽の名作を生み出したと回想した。「バッテリーの心理のやり取りなんかは野球通じゃなかったら描けなかったりするもの。配球の中で『そういう描かれ方をするんだ』っていうのはあった」。

 水島さんと当時の選手、球団がいかに近い存在であったかも証言した。「先生自身がロッカーの中の生きた僕らの会話を聞きながら、それをヒントにしながら描かれていたとおっしゃっていた」。鷹の選手ロッカーはいわば名作の生産工場――。顔パスで監督室まで入れた〝最強の部外者〟らしいエピソードを懐かしんだ。

 2000安打達成時には「あぶさんの絵が入ったお祝いの皿をいただいた」。チームの主力に成長すると「銀座でステーキを食べた思い出がある。先生にプライベートで食事に誘ってもらうなんて、なかなかないこと。ウキウキして行った」という勲章に改めて胸を張った。

 ホークスが弱小から常勝の礎を築く過程でチームの主力として君臨し、今は指導者として水島さんが愛した球団に戻ってきた。「強烈なインパクト、1つ秀でているものがある方がこの世界では強い。そういう選手を見つけて伸ばしてあげられるようにやっていきたい」。水島漫画に登場する強烈なキャラクターたちに重ねながら後進の育成に思いをはせた。最後に、あぶさんと同じ番号を背負いし男は「その番号をこれからも大切にしながら先生の思いを忘れずに、自分の心の中に置きながら野球人生を歩んでいきたい」と言葉をかみ締めるように言った。

 付き合いが深かったからこそ水島さんが伝えたかったもの、表現したかったものは分かっている。負けない野球愛と情熱で指導者人生を歩んでいく。