【赤坂英一 赤ペン!!】今年の自主トレ報道では「減量」と「増量」というワードがトレンドになっている。「減量」派の筆頭は新庄ビッグボスにダイエット指令を出された日本ハム・清宮。103キロから94キロと9キロ落として「動きやすくなった」と話していた。

 一方、その清宮と佐賀で一緒に自主トレしているロッテ・安田は98キロから103キロへ5キロ増量。「増やして(打撃が)どうなるのかを見てみたい」のだそうだ。

 さらに巨人・中田は92キロから109キロと、一気に17キロも増量。ただし、本人に言わせれば現在の体重がほぼベストで、昨年までは腰痛で満足にウエートトレができなかったために痩せてしまったのだという。

 その中田と石垣島で自主トレしている巨人・秋広は、99キロから100キロ台を目指して増量中。連日練習後にご飯をドカ食いしているとか。

 減量と増量、どちらがプロの体調管理として正しいのか。一概に言えないが、大切なのは効果がないとわかれば方向転換する柔軟さだろう。

 その意味で過去一番の成功例が、現役時代のデーブ大久保。大型捕手の彼は西武時代、体重を絞るよう首脳陣に厳命されていた。毎月計量が実施され、100キロを1キロオーバーにするごとに罰金5万円。おかげで87キロまで痩せたものの、生来の長打力が完全に影を潜めてしまった。
 ところが、1992年にトレードされた巨人では、藤田監督が「原(現監督)や吉村も太ってるんだ。気にせずにメシを食え」と大久保を激励。宿舎の食堂でステーキを2人前食べさせてくれた。おかげで108キロまで増量し、打棒爆発につながったのである。

 この方向転換の経験が、2008年に西武の打撃コーチに就任したときも生かされた。当時、102キロの中村に「体重が増えても気にするな」と助言。この年、本塁打王となるほどの主砲に育て上げたのだ。

 コーチ経験の長い某OBはこう言っている。

「外見はどうあれ、本人が最も力を発揮できるのが適正体重です。体重よりも体脂肪率を10%前後に維持することが重要だという考え方もある。中村や中田もそういうタイプですよ。清宮はわかりませんけどね」

 そういえば、中田は08年の日本ハム入団直後「動けるデブになればいいんでしょ」と言っていた。当時、この発言は散々叩かれたが、あながち間違ってはいなかったのかもしれない。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。