ソフトバンク・石川柊太投手(29)が22日、ペイペイドームで契約を更改し、4000万円アップの年俸1億2000万円+出来高でサインした。開幕投手を務めた8年目の今季はチームで唯一、規定投球回をクリア。6勝9敗、防御率3・40の数字には満足していないが「球団には量のところで評価してもらった」と大台突破を喜んだ。千賀、甲斐に続く球団3人目となる「育成出身1億円プレーヤー」の誕生。苦闘の連続だった2021年をバラ色で締めた。

 右腕一本で育成からはい上がってきた。メンタルの強さ、マインドの作り方は人よりもうまいタイプ。だが、今季は序盤に好投を連発するも、相手エースとの直接対決や打線の援護がなく勝ち星に恵まれず「心の持ち方がすごく難しかった」という。シーズン通して歯車がかみ合わず、9月には「初回10失点」の悪夢にも直面。同僚からは「元気なフリすらできていなかった」と指摘されることもあった。

 石川がファンの温かい声援とともに「本当に救われた」と感謝する人物がいる。今季、本拠地での試合前練習中におなじみの光景があった。それは王貞治球団会長(81)と石川の雑談シーン。王会長が決まって練習終わりに石川を呼び寄せ、肩をさすりながら語りかけていた。「開幕などの節目や負けが込んだり、内容的にはいい投球でも勝てない時に励ましじゃないけど、助言をもらった」。印象に残ったのは「投手は負けさせることはできても、勝たせることはできない」という話。「会長から実際に言われると、その辺を再確認できた」。苦境打破の一助となり、後半戦は「勝ち負けに敏感にならずに投げられた」。

 今月27日に30歳の節目を迎える右腕。「周りに悲劇のヒーローぶってるように見えたのなら、それは余裕がなかったから。この経験を今後の糧にしたい」。王会長との濃密な時間が、間違いなく石川の成長を後押しした。

(金額は推定)