その影響力は球界全体に広まりそうな勢いだ。日本ハムのビッグボスこと新庄剛志監督(49)が8日にメットライフドームで行われたプロ野球12球団合同トライアウトを視察した。現役復帰をかけて参加した昨年から一転して、今回は「獲得する立場」として参加。目についた4選手の名前を挙げて具体的な評価を口にするなど〝新庄節〟も全開だった。そんな話題の指揮官の言葉を巡っては、球界内で「神の御言葉」とまで崇められている。

 気温10度前後と底冷えするメットライフドームに、ビッグボスは稲葉GMとともに姿を見せた。何かと注目されるファッションは〝まっさらな気持ち〟をアピールするかのように、上半身は純白のダウンコートにハイネックのセーターというコーディネート。話題の新人監督の参上に、各球団の関係者たちが〝新庄詣で〟に大挙した。他球団の編成関係者たちにとっては参加選手と同じくらい興味深い存在だったのかもしれない。

 ビッグボスの魅力の一つである「ぶっちゃけトーク」は、この日も健在だった。午前の部が終わると報道陣の取材に応じ「全員欲しいですね。僕が(昨年は)プロ野球選手になりたくて受けて、気持ちはすごい分かるので、少しでもいいところを見ていました」と、ありのままの心境を明かした。

 それだけではない。ビッグボスは注目選手の実名まで公表。元阪神で今季は台湾でプレーした高野圭佑投手(29)、前オリックスの金田和之投手(31)、元楽天の中村和希外野手(26)、前巨人の山下航汰外野手(21)の4選手をピックアップし「台湾出身の高野君のカットボールが目に付いたのと金田君。野手では中村君。(他には)ジャイアンツの山下君ってファームで首位打者取っているんですよね。面白いですよね。ただちょっと肩のほうが気になった。もしウチが取るのであればDHなどだと面白いかなと思います」と注目点と獲得に至った場合の起用法にまで言及した。

 高野は打者3人に対して1安打無失点、金田は最速147キロの直球を武器に1奪三振1四球で無失点。中村は6打席で3安打、山下は1安打だった。午後の部を控えていたビッグボスは「これで全然違う子を取ったりしてね。ありますからね」と不敵な笑みを浮かべたが、その動向に注目が集まることは間違いない。

 こうした一連の新庄監督の言葉は、内容以上に価値のあるものとなりそうだ。過去にトライアウト参加経験を持つ元プロ野球選手はこう話す。

「トライアウトに参加する選手の多くが、今後野球を続けようか、あるいは続けていいのか迷っている人たち。新庄さんのような時の人に名指しで褒めてもらえるようなことがあれば、最高の後押しになって野球を続ける決心がつくし、逆に悔いなく踏ん切りをつけることだってできるかもしれない。神様の言葉のようなものですし、自分の時も新庄さんがいたら面白かったんですけどね(笑い)」

 トライアウトへの参加者は減少傾向にある。今年は急きょ参加が決まった新庄監督だが、前出の元プロのような選手が多いのであれば「ビッグボス効果」で来年は参加者が増加する可能性すら考えられる。今回金言を賜った山下も、その事実を知り「待つことしかできないで…。いい結果を待ちたい」と淡い期待を抱いた。

 48歳で参加した昨年は1安打を放ち、それから1年でチームを率いる立場となったビッグボスは「去年受けて、今監督ですよ。この選手たちも来年監督になるチャンスがあるかもしれない」とまで言った。わずかな可能性にかけている選手たちにとっては「神の言葉」にも聞こえたはずだ。