金の卵が〝北の大砲〟を救うか。巨人の中田翔内野手(32)が7日に東京都内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、今季年俸3億4000万円から大幅減となる1億5000万円でサインした。8月の巨人移籍後は34試合に出場して打率1割5分4厘、3本塁打、7打点。来季、完全復活できるかどうかは意外な人物が鍵を握っている。

 波乱の1年となった。今季は開幕から不振に苦しみ、8月には同僚選手に暴力行為を働いたとして所属していた日本ハムから出場停止処分が下され、巨人への電撃トレードで14年も過ごしたチームを後にした。

 しかし、新天地でも心機一転とはならず、2球団での今季通算打率は自己ワーストの1割7分7厘、本塁打も2010年以来の1桁となる7本だった。結果を残すこと以外に、中田にできることはない。「本当にいろいろな方であったり、ファンの皆さんに心配や迷惑をかけてしまった。本当にしっかり自分の中で受け止めて、もっともっと結果を残して皆さんに恩返ししていきたいなと思います」と来季に向けて決意を新たにした。

 昨季まで10年連続2桁本塁打を記録したパワーや、3度の打点王を獲得した実績からも、キッカケさえつかめれば輝きを取り戻す可能性は大いにある。中田自身も「(来年は)いい意味で、もっと荒々しくというか…。(今季は)スイング一つにしてもちょっと委縮してしまっている自分がいたので、来年はすべてを開放して一から頑張りたいなと思います」と話しているように、完全復活を目指す上で鍵となりそうなのがメンタルだ。移籍間もない時期には、古巣・日本ハムからこんな声が聞こえていた。

「中田は基本的に『世話焼き』な兄貴肌。飯をおごったりプレゼントを贈ったり。オフには後輩を自主トレに連れて行って鍛え上げていましたし、とことんかわいがる。そうした中で『こいつらを引っ張っていくんだ』と、自分自身にもいい相乗効果が生まれていたと思うんですが、移籍の経緯が経緯なだけに、巨人では後輩選手も近づきにくいのでは…」(日本ハム関係者)

 今オフに石垣島で行う合同自主トレには古巣の後輩らのほか、巨人の大砲候補・秋広が参加することになった。しかも秋広は〝志願兵〟だ。中田は「『なんで俺?』とは言いました。『もっと他にいっぱいおるやろ』って」と驚きを隠せない様子だったが、かわいい後輩に「一緒にやりたいんです」と言われて悪い気がするはずもなく「一緒にやるか」となった。

 新天地でも慕ってくれる後輩ができたことは追い風だろう。向上心を持った秋広が中田の〝兄貴心〟をくすぐれば、自ずと打撃にも輝きが戻ってくるかもしれない。