虎の扇の要に求められるものは――。国内FA権を行使せず残留を表明していた阪神・梅野隆太郎捕手(30)が7日に契約交渉に臨み、3年契約の年俸1億6000万円でサインした。球団側から「梅野なくして優勝はない」と言われたと明かし「意気に感じてやっていきたい。最後は気持ちよく決断した」とスッキリした表情で話した。

 残留か、FAか。決断に至るまで「いろいろと考えたときもあった」と言う。今季は出場130試合ながらヤクルト、巨人とのV争いが佳境を迎えた今季ラスト11試合は先発マスクを坂本誠志郎(28)に譲った。投手との共同作業とはいえ、その間のチームは6勝2敗3分け。2失点以内が9試合、うち3試合は無失点で矢野監督の決断は「吉」と出た。

 今年の梅野は日本代表にも初選出され、東京五輪の金メダル獲得にも貢献。球界を代表する捕手がケガや故障でもなく、最も大事な時期に控えとなったことで「FA移籍するのでは?」とメディアも過熱した。「なぜ矢野監督は優勝争いの佳境を坂本に託したのか?」との論争にも発展した。

 ただ、9月までは3試合を除き、全試合で先発マスクを被っていたのは梅野だった。ネット裏で分析していたライバル球団のスコアラーは「ずっと試合に出ていた梅野と、ベンチから客観的に見ていた坂本では、頭や体の疲労度が違います。だから一概に比較できるものじゃない」とした上で、こう続けた。

「捕手って野手で唯一、逆向いているでしょ? 要は投手以外で最も意図的に試合を止めたり、テンポアップさせたりができる。タイムをかけるかわりに自分で投手のところに行ったり、投手が投げ急ぐの防ぐためにサイン交換後にわざと自分が立ち上がって、もう1回サイン交換したりとか。要はピンチでの間の取り方や時間のかけ方、やばいと思ったときの嗅覚とでも言うんですかね。9月以降は、後ろから見ていても坂本のほうが、視野が広いなって感じるときがありましたね」

 指摘された課題は伸びしろとも言える。チームを優勝に導く司令塔として、何が必要かを強く感じているのは他ならぬ梅野本人のはずだ。(金額は推定)