ヤクルト日本一! 守護神マクガフを2回1/3投げさせた「高津マジック」を前田幸長氏が絶賛

2021年11月28日 00時00分

連投を苦にせず、第6戦の終盤で力投したヤクルト・マクガフ(東スポWeb)
連投を苦にせず、第6戦の終盤で力投したヤクルト・マクガフ(東スポWeb)

【前田幸長・直球勝負】素晴らしい日本シリーズだった。最後まで予想がつかない展開に私も終始酔いしれた。20年ぶりに日本一に輝いたヤクルトの面々はもちろん、涙を飲んだオリックスの選手たちにも拍手を送らせていただきたい。

 この日本シリーズではあらためて高津采配の妙を見た気がしている。第6戦での先発予想は戦前、個人的に頭を悩ませた。オリックスの中嶋監督は第5戦で勝利後、この日の一戦の先発に中6日でエース・山本の投入を早々と宣言。一方の高津監督は公言こそしなかったものの「前から決めていた」というシリーズ初登板となる高梨を先発マウンドへ送った。どうしても3勝3敗のイーブンに持っていかれたくないと考えるならば、奥川、あるいは高橋を第6戦で投げさせることも全くあり得ないチョイスではなかったであろう。

 もちろん〝負けてOKの試合〟などあるはずもないが、高津監督は第6戦で対峙する相手エース・山本の攻略をそう簡単ではないと見込んでいたはずだ。だからこそ第7戦の〝最終決戦〟を見据えたマネジメントも怠るわけにはいかない。

 レギュラーシーズンでも登板間隔を空けながら大事に使い続けていた奥川をシリーズ初戦から中7日で第7戦先発に満を持す形で起用。そして第2戦で完封した高橋をロングリリーフとして待機させ、ラストゲームは総力戦で勝ちに行く。あるいは先発・高橋、中継ぎで奥川と逆パターンの起用もある。そのようなプランニングを伊藤投手コーチとともに描いていたに違いない。つまり余力を残す戦い方だ。

 とはいえ、大役を任された高梨も実はデータ的にみれば日本ハム時代のラストイヤーとなる2018年にオリックス戦で3試合先発し2勝を挙げ、防御率2・11の好成績を残している〝猛牛キラー〟。そして、このほっともっとフィールド神戸でも昨年7月12日の巨人戦で先発登板し、5回2失点で勝利投手となっており、敵地マウンドの感触を体感済みだった。4回2/3を1失点とした投球内容は上々のデキだったと言えるだろう。結果として、この高津監督のデータに基づく〝読み〟はズバリ的中したと言える。

 その後も指揮官の采配はさえ渡った。スアレス、清水、田口と絶妙の継投リレーでつなぎ、守護神・マクガフを延長10回二死無走者の場面から右の4番・杉本のところで投入し、見逃し三振。さらに驚かされたのはマクガフをイニングまたぎで勝ち越してからの延長12回裏まで続投させたことだ。日本シリーズでは前々日25日の試合も含め2度救援に失敗しており、この日の起用が注目されていたが、高津監督はマクガフ本人の強い気構えも尊重し、2回1/3を投げさせてキッチリと汚名返上の〝胴上げ投手〟へと導いた。投手出身の指揮官らしく、マクガフらブルペン陣たちの心理状況もしっかりとくみ取っていたのであろう。

 チームの伝統として引き継ぐ「野村ID野球」をバージョンアップさせた〝高津マジック〟。日本一をつかんだ53歳指揮官に「さすが」の言葉を送りたい。

(本紙評論家)
 

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