編成に口出ししなかったソフトバンク・工藤前監督 熱視線を唯一送った “好みの選手” とは

2021年11月23日 10時00分

先月の退任会見では感極まる場面もあったソフトバンク・工藤前監督(東スポWeb)
先月の退任会見では感極まる場面もあったソフトバンク・工藤前監督(東スポWeb)

【取材のウラ側 現場ノート】「目は口ほどに物を言う」――。今季まで常勝軍団ソフトバンクを7年間指揮した工藤公康前監督(58)の口癖だ。

 3度のリーグ優勝、5度の日本一に導き、ポストシーズンでは無類の強さを誇り「短期決戦の鬼」と称された。すさまじかったここぞの勝負根性と勝ち運。ペナントレースが佳境を迎えるシーズン終盤、チーム内から敬意を表して漏れる「勉強させてもらいました」という声を聞くたびに名将のすごみを感じた。

 最新の動作解析やデータにも明るかったが、とりわけ洞察力に長けていた。采配、選手起用にそれが表れていたが、根拠は名将だけにしか分からない領域があるのだろうと思っていた。工藤前監督が注視していたのは、選手の面構え。タクトが光るたびに、冒頭の言葉を思い出した。

 工藤前監督は在任中、編成面に口出しすることはなかった。選手獲得はフロントの仕事とわきまえ、与えられた戦力でどう勝つかに没頭した。だが、一度だけ「好みの選手」を強調したことがあった。2018年のドラフト直前。「何というか顔がいいよね。分かるかな。勝負師という感じがする。『よし、やるぞ』っていうのが顔に出ている。ああいうのっていいじゃん」。当時、ドラフトの目玉だった大阪桐蔭・根尾昂(中日)に熱視線を送っていた。フロントは早くから報徳学園・小園海斗(広島)を高評価し、抽選覚悟で指名した。

 今でも中日・根尾の顔を見るたびに、工藤前監督の口癖を思い出す。私は新聞の活字にはならない「雑談」を工藤前監督とするのが好きだった。「素の工藤公康」が語る熱を帯びた話は興味深く、現役通算224勝、球界の最高栄誉「正力松太郎賞」を最多5度受賞したゆえんを感じることができたからだ。選手のどこを見るべきか、これからの取材で生かしていきたい。(ソフトバンク担当・福田孝洋)

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