オリックスは12日、ロッテとのCSファイナルステージ第3戦(京セラ)を3―3の〝サヨナラ〟ドローに持ち込み、25年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。本紙評論家の前田幸長氏はオリックス・中嶋聡監督が勝負どころで放った強攻策に驚愕。シーズン通しての「若手を生かす野球」を大絶賛した。

【前田幸長・直球勝負】最後は驚かされた。1点を取れば日本シリーズ進出が決まる9回の攻撃。先頭のT―岡田が右前打を放ち無死一塁。安達は初球のバントがファウルになると、2球目はヒッティングに切り替えて左前打で続いた。最後は無死一、二塁から小田が連続強行策となるバスターで一塁線を破り試合を決めた。

 何としてでも1点を取りたい場面だ。安達の強行策はともかく、小田はシーズン101試合に出場しながら打撃成績は15打数1安打だった代走・守備固めの中堅選手。この日も守備からの途中出場だった。「100%送りバント」と思ったのは私だけではなかったはず。中嶋監督の見事な采配だった。それに見事に小田が応えた。

 投の山本、打の吉田正と核となる選手がいるのも大きい。ただ、今年のオリックスの大躍進は中嶋監督の選手起用によるところも大きかった。昨季の途中まで二軍監督を務め、若い選手を見てきた強みを存分に生かした結果だと思う。その筆頭が4番に成長した杉本だ。

 もともと長打力はあっても穴も大きかった。中嶋監督にならなければ出てきてなかったかもしれないとさえ感じる。シーズンでも決して選手層が厚くない中で、二軍から上げてきた選手が大仕事をしてチームの勝利に貢献するなどしていた。その選手の良さを生かす起用がはまった結果なのではないだろうか。こうなれば中堅ベテランも燃えてくる。

 このCSを通して見ていても、若い選手も多くベンチのムードの良さ、勢いや一体感が伝わってきた。もともとシーズンから犠打はリーグ最少でもある中で、最後の連続強攻策にしてもベンチの勢いを生かした攻撃にも見えた。言うなれば、若手を生かす〝中嶋令和野球〟が実を結んだ勝利ではないだろうか。

 その一方、私の古巣・ロッテは残念ながらファイナルで1勝もできなかった。それでもシーズンは2年連続2位。確実にチームは強くなっている。来季は佐々木朗希のさらなる本格化が期待されるが、打つほうでも若い安田、藤原のドラ1コンビに出てきてほしい。昨季のCSでは両者ともにスタメン起用されていた。それが今年は出番も少なかった。彼らが打線に並ぶようになれば、悲願のリーグVも近づくはずだ。

(本紙評論家)