これが力の差か。11日のセ・リーグCSファイナルステージ第2戦(神宮)で、巨人は0―5でヤクルトに完敗。CS突破は風前の灯火となった。原巨人が頼みとしたエースはなぜ崩れたのか。本紙評論家の前田幸長氏は「シーズン終盤の無理使いのツケ」が出たと指摘した。

【前田幸長・直球勝負】先発マウンドに立った巨人・菅野は、5回2/3を113球、5安打5失点の内容で砕け散った。本来の姿ではなく〝らしくない〟投球だったのは明らかだった。

 立ち上がりこそ、わずか8球で三者凡退に仕留め、最高のスタートを切ったかのように見えた。しかし2回以降は5回を除き、すべて先頭打者に安打を許す苦しい投球を強いられた。

 この日は要所で際どいコースに投げ込みながら、なかなか球審の手が上がらず苦しんだ。スライダーを多投するなど、悪いなりに何とか中盤までは形を作ってしのいでいたとはいえ、ヤクルト打線に捕まるのは時間の問題だったと言えるかもしれない。

 阪神とのCSファーストステージ初戦(6日・甲子園)から中4日での登板。短期決戦での中4日は当然、ありうる起用法だが、レギュラーシーズン終盤で強いられた〝特攻ローテ〟のツケが現れてしまった感はどうしても否めない。9月12日の広島戦(マツダ)で今季初の中4日先発して以降、エースは登板6試合のうち中5日のマウンドを計4回もこなしている。

 巨人の苦しい先発事情を考慮すれば首脳陣の選択は「やむなし」だったかもしれないが…。この日の6回途中KOと、シーズン終盤での疲労蓄積は無関係とは言い切れない。

 そんな菅野に投げ勝ったヤクルトの先発左腕・高橋は、ストライクゾーンの中でいい感じに〝暴れる〟投球で巨人打線に狙い球を絞らせなかった。同じ左腕の自分も、若いころは「いい時のお前は逆球が6~7割。それでも球にキレがあるから勢いで抑え込める」と言われていたが、高橋も逆球でもお構いなしの、キレで勝負するタイプ。大一番でチームを王手に導いた24歳は、まだまだ伸びるはずだ。

 リーグVのヤクルトと借金1で3位に沈んだ巨人。あらためて〝その差〟の大きさを痛切に感じた試合だった。

(本紙評論家)