セ・リーグのCSファイナルステージ第1戦が10日に神宮球場で行われ、リーグを制したヤクルトが、3位の巨人に4―0で先勝した。これでアドバンテージを含めて0勝2敗となった巨人は一気に苦しくなったが、阪神に連勝してファーストSを勝ち上がってきた勢いはどこへ行ってしまったのか。本紙評論家の伊勢孝夫氏は「相手投手への対策ができていない」との問題点を指摘し、阪神撃破についても「相手のミスに助けられただけで強いわけではない」とバッサリ。ペナントレース同様、このまま押し切られてしまうのか…。

【新IDアナライザー】大したものだ。CSファーストステージ初戦の大一番で巨人を相手に無四球完封勝利を飾ったヤクルト・奥川のことである。どんな状況でもまったく動じない強心臓、そしてとにかく制球力が素晴らしい。ベンチの高津監督も終始安心して見ていることができたはずだ。

 それにしても、プロ2年目の20歳右腕になすすべなくひねられた巨人打線の淡白な攻めには、どこにもピンと来る要素が最初から最後まで感じられなかった。

 CSファーストSで阪神に2連勝した巨人について「勢いをつけて蘇った」とか「まるで優勝したかのような強さを取り戻した」などとやたらと過剰に持ち上げる論評記事も見聞きするが、私から言わせればそんな短期間で簡単に変わるものではない。レギュラーシーズン終盤で大失速した時と同様、今の巨人も別に強いチームではないと思っている。

 阪神とのCSファーストSも、しょせんは第1戦、2戦ともに相手のミスも絡んだ少ないチャンスを突破口にして勝った流れであり、特段圧倒的な内容を残したわけでもない。

 この日、相手の先発マウンドに立った奥川は確かに総合力が高く素晴らしい投手だが、球種は140キロ後半の真っすぐとフォーク、それにカットボールも含めたスライダー系が主体で決して豊富ではなく、巨人打線から見れば狙い球も絞りにくくはないはずだ。ところが事実として、この奥川にはレギュラーシーズンから数えてこれで3試合連続の敗戦を喫してしまっている。当然ながらスコアラーを交えたミーティングで入念な奥川対策を講じているはずであろうが、結果的に徹底できておらず創意工夫の見られない攻撃でアッサリとやられてしまった。

 チーム全体で狙い球を絞っていたとしても、今の巨人は経験値と能力の高い打者が多いだけに自分たちの感性を信じ、ミーティングの内容は全体的に〝右から左〟の傾向になっているのかもしれない。もちろん、この打者の自主性はケースバイケースで一概に「NG」とされるべきものではないが、少なくとも奥川対策に関しては完全な裏目に出ていることをベンチは肝に銘じておくべきだろう。

 1勝のアドバンテージを持つヤクルトに完敗で先勝されたダメージはかなり大きい。「強くない」と言われた巨人がここから猛奮起し、もう少し意地をのぞかせるような展開も見てみたい気がしている。

(本紙評論家)