パ・リーグのCSファイナルステージ第1戦(10日、京セラドーム)はリーグ覇者のオリックスが、レギュラーシーズン2位のロッテに1―0で快勝。対戦成績をアドバンテージを含む2勝0敗とした。勝利の立役者は4安打無四球完封勝利をマークした「無双エース」山本由伸(23)。ネット裏の評論家からは〝もはや攻略不能〟との声も上がった。

【加藤伸一 インハイアウトロー】圧巻の投球だった。死角も見当たらない。4安打、無四球で初回にもらった1点を守っての完封勝利だ。「あっぱれ」としか言いようがない投球だった。

 立ち上がりこそ、いつもの山本からすれば高めに抜けていた球もあったものの、5回以降は1人の走者も許さなかった。最速157キロの直球、フォーク、カット、そして決め球にも使っていたカーブと打てる球はなかったと言っていいだろう。

 一つひとつのボールだけではない。彼が球界ナンバーワン投手と言えるのは、状況や状態に左右されない安定感のある投球だ。初のCS、実戦は中15日と空いていた。その中で15連勝締めと圧倒したペナント同様の投球だった。技術、精神力、すべての能力が今いる日本の投手の中で抜けている。

 逆にどうやったら山本を攻略できるのか。はっきり言って、まともに正面からぶつかってKOするのは難しい。となれば走者が出れば犠打、進塁打はもちろん、策を講じて二塁、三塁と進めていくしかない。そうすれば山本は攻略できずとも、後ろで守る野手にプレッシャーをかけることができる。リードする捕手にもプレッシャーをかけられる。

 その点では一つもったいなく感じたのはロッテの打線の組み方だった。打率、出塁率ともに高い荻野、中村奨を1番と3番に置き、長打力のあるマーティン、レアードを2番と4番に置く上位打線の並びを作った。これは1勝1分けで勝ち抜いたCSファーストステージでも組んでいた打って返す攻撃的なオーダーだ。

 ただ、相手は半年近く一度も負けておらず、ヒットや四球が続くことはほとんど期待できない投手。ロッテ打線の対山本の数字は悪くないが、あくまでも5月以前の対戦でしかない。結果論になってしまうが、4回まで実に3度先頭打者がヒットで出塁しながら、無死一塁から続く打者がマーティン、レアード、山口となり、ただ打つだけとなってしまった。

 ロッテからすればこれでアドバンテージも含めて2敗となった。もっとも、引きずる敗戦ではないはずだ。もはやこの山本に負ける分には仕方がない。第5戦以降までもつれれば再び対戦することになるだろうが、2戦目、3戦目に向けては切り替えやすいのではないだろうか。

(本紙評論家)