シーズン2位の阪神が3位の巨人に敗れ、2連敗でCS敗退が決まった。どうしてこうなってしまったのか。本紙評論家の伊勢孝夫氏は、短期決戦においての両軍指揮官の経験値の差を指摘。その上で、10日からのファイナルSで、ヤクルトと対戦する巨人の〝勝機〟についても言及した。


【新IDアナライザー】短期決戦に慣れている原監督と、そうでない矢野監督の違いが出たと思う。阪神がダメだったのは攻撃陣だ。なんで11安打もして2点なのか。情けなすぎるし、見ていてストレスのたまる野球だった。

 オーダーは大山、佐藤輝を入れ、近本を1番に戻して重量感はあったと思う。しかし、糸原にしてもマルテにしても1球目からいくのはいいが、みんなボール球に手を出している。それは積極性とは違う。ある程度、1球目は球種、コースがドンピシャで当たり、なおかつストライクを振ること。ストライクゾーンなら何でもかんでも打つというのは好球必打ではない。

 巨人の方がファーストストライクの好球を的確につかまえていた。これは経験値の差なのか、と思って見ていた。佐藤輝の最後の打席もボール気味の初球に手を出して投ゴロだったし、その辺を我慢できるかが今後の課題になる。

 4回に無死一塁の場面で代打・糸井を使ったのも早かった。投手の青柳に犠打をさせてよかったし、代えるなら次のイニングからでも代えられる。でないと後半にチャンスがめぐって来た時に左打者で誰がいるのか、となる。木浪よりも糸井を持っている方がいいに決まっている。結果、これも初球の高めに手を出して二飛に倒れ、もったいない使い方だった。

 巨人の方が1枚も2枚も上手だった。大山への攻め方も前日の第1戦、代打で初球の真っすぐを左前に打たれたことで、この日は初球をことごとく変化球で外してきていた。総合的なミーティングを含めて攻め方を徹底していたと思うし、これでは何度やっても阪神は巨人に勝てない。原監督も戦い方をわかっていた。

 巨人はシーズン終盤に10連敗を喫したことでCSも不利な見方をされていただろう。しかし、首位から大きく引き離され、シャカリキになってやっても追いつかない。それよりもCSで本気を出せばいいと、坂本なんかは「タヌキ」だから、そこまで考えていたんじゃないか。

 ファイナルのヤクルト戦はこうはいかないまでも巨人に勝機はある。ヤクルトの1勝のアドバンテージを入れて五分五分だろう。ヤクルトは昔から重圧を抱えずにプレーするし、その分、何を起こすかわからないチーム。巨人は今回、松原、ウィーラーがいい働きをしたし、つなげていければ面白い試合になる。今の時点でいえば投手力は五分、攻撃は2戦を終えた巨人が上だろう。(本紙評論家)