オリックス優勝の大きな原動力の一つに日本野球機構(NPB)の〝不名誉動画〟がある。

 NPBは2014年にプロ野球80周年を記念したビデオを制作。タケカワユキヒデの「ドンマイMYフレンド」をバックに「プロ野球の軌跡」と題し、年代順に出来事を写真で振り返るもので、動画は各球場で試合前に流される。

 1934年の「沢村栄治 全米選抜チームに好投」から始まり、59年の「長嶋天覧ホームラン」や79年の「江夏21球」、88年の「10・19 熱い日」(近鉄対ロッテ)などが紹介され、その後は93年の「ID野球 ヤクルト日本一」、94年の「10・8 国民的行事」(リーグ優勝をかけた中日対巨人の決戦)と続く。

 問題は94年の後、オリックスが阪神・淡路大震災から連覇した95年、96年をスルーして、98年の「大魔神 横浜日本一」に飛んでしまうことだ。何度か内容は更新されているが、これまでオリックスにとって大事な2年間が取り上げられたことはない。オリックスのフロント関係者は「ウチの〝がんばろう神戸〟はずっと入っていない。なんででしょうかね」と不思議で仕方がない様子だ。

 曲の時間的制約があるとはいえ「イチローフィーバー」と復興のスローガンとなった「がんばろう神戸」で連覇した2年間が〝省略〟されては、球団関係者もだまっていられない。「あの2年間はウチの宝です。ハショられるなんておかしい。おそらくNPBは動画制作を広告代理店任せにしているだけで、ノータッチなんじゃないか。アップデートしてほしいし、あの2年が入っていないなら流さないでほしいくらい」と悔しさをにじませていた。

 震災を乗り越えてリーグ優勝を果たし、翌96年には長嶋巨人を破って日本一を達成した黄金期は球団の誇りでもあった。動画には2013年、東日本大震災から優勝した楽天の「東北に初の歓喜」が登場しているからなおさらだ。NPBは本紙の取材に対して「写真や権利の関係もあり、当初よりラインアップに入れたいと思っている出来事がすべて入れられている訳ではありません」と他意はないとした。

 今季も栄光の2年間は〝忘れ去られた〟ままだった。その悔しさをばねに頂点へ。今度こそ長期低迷からの〝痛快V〟を球史に刻みたい。