阪神は14日の巨人戦(東京ドーム)に3―0で勝利。首位・ヤクルトは中日と引き分けたため、ゲーム差は2にまで縮まった。

 ゲームは高橋と山口の両先発による投手戦。淡々とスコアボードに0が刻まれ続けるジリジリとした展開だったが、ドラマは9回二死に待っていた。主役は〝控え組〟として悔しい思いをしてきた2人の選手だ。

 9回、中野と近本の連続安打で無死一、二塁のチャンスをつくったが、続くマルテが二飛、糸原が空振り三振に倒れ、あっという間に二死一、二塁。後がなくなった状況で打席へ入ったのは前日13日に一軍へ昇格してきたばかりの板山。「二軍監督の頃から一緒にやっているんだけど、どんな状況の時も腐らずやってきた。直感ではないけど『板山にこの打席を任せていい』と思えた」(矢野監督)。指揮官の思いに背番号63は見事に応えた。

 板山はカウント0―2まで追い込まれるも、相手守護神ビエイラの投じた3球目145キロを強振。打球は右翼フェンス最上部を直撃する決勝適時二塁打となった。

 なおも二死二、三塁とし次打者は、今季中野に遊撃の定位置を奪われベンチ要因に甘んじていた木浪。カウント1―2からビエイラの162キロを流し打ち2点適時二塁打をマークしスコアは3―0。逆転Vへ望みをつなぐ大きな追加点をチームにもたらした。

「最高にうれしいです! 大学(亜大)の後輩・高橋が頑張っていたので何とか点をとってやりたいという気持ちでした」。敵地のお立ち台で喜びを爆発させた板山も、追加点を挙げた木浪も亜大出身。「(板山の適時打を見て)『キター』と思った。何とか食らいついてやろうという気持ちで続いた。きょうは亜細亜の日だな、と思いました(笑い)」と木浪も相好を崩す。

 文字通りのチーム一丸の試合でシビアな一戦をもぎとった矢野阪神。残り試合数、ヤクルトとの勝率差を考えればチームの置かれた状況は依然厳しいが、虎の牙はまだまだ折れていない。