阪神・佐藤輝明内野手(22)が28日の広島戦(甲子園)で3打数ノーヒット。これで連続打席無安打は「53」となり、2リーグ制以降の野手ワースト記録に肩を並べてしまった。苦悩の日々が続くなか、どうすればいいのか。ネット裏の評論家からは、V争いをしているチームだからこそ、取り組むべき努力を怪物新人に求める声が上がった。


 またしても長いトンネルを抜け出すことはできなかった。この日「7番・右翼」で先発した佐藤輝は、広島先発・床田の前に見逃し三振、二ゴロ、7回は2番手・島内の155キロ直球に空振り三振。これで53打席連続無安打に終わり、1993年にトーベ(オリックス)が記録した、NPB野手ワースト記録に並んでしまった。

 チームも0―2で敗戦。試合後の矢野監督は、一軍に再昇格した23日から5試合続けて先発も18打席連続無安打と苦戦が続く佐藤輝の、今後の起用法について「そんなん今、ここでは分かれへん」とコメントするにとどめた。

 経験値の浅いルーキーだけに、一朝一夕には状況が一変しづらいのも致し方ない側面はあるが…。確かにこのままの状態が続くようであれば、起用法としても難しくなる。

 球団OBで阪神、日本ハムで打撃コーチを務めた柏原純一氏も「積極的に振っていくのが彼の良さ。それを消さないように、一軍で確率を上げていくってのは簡単ではない」と〝我慢〟の起用を続ける矢野監督の胸中をおもんぱかる。

 しかも、チームは優勝争いの真っただ中。「下位チームで将来のための起用がまかり通る環境ならまだしも、今の阪神はその逆だから」と、状況に応じて最も結果が残せる人材を選別することも並行して求められるだけに、矢野監督も「育てながら勝つ」難題に直面しているのが現実だ。

 その一方、柏原氏は佐藤輝に「見せなければならない姿勢はある。一軍に戻ってからは(降格)前よりかは確かにボールを選べるようにはなって、四球は取れてきている。その結果、塁に出れたなら、今度は違う自分の武器で『チームに必要な理由』を増やしていけばいい」という。

 その武器とは、50メートル6秒ジャストで走れる脚力のこと。

「もともと盗塁できる脚力はある。積極的に次の塁を狙う姿勢を自ら見せることで、敵も味方も、改めて『打つだけじゃない』という見方をしてくれるはずだし、監督やコーチも今の彼には『使う理由』を一つでも多く実際の試合で見せてほしいと思っているはず」(柏原氏)

 打てないときこそ、それ以外のツールで補うべきという思考だ。

 今季の佐藤輝はチームトップの23本塁打を放ってきた一方、盗塁はまだ5。企図数自体もまだ6度のみ。思い起こせば1年前のドラフト後、矢野監督は佐藤輝を「将来はフォーティ・フォーティ(40本塁打・40盗塁)を何度もするような選手と思っています」と評価している。

 V争いを続けるチームで有効な〝コマ〟であり続けるためにも、佐藤輝の「脚」は、よりどん欲に狙うべきパフォーマンスとなりそうだ。