怪物新人は表舞台にいつ戻って来るのか。不振で10日にプロ初の二軍降格となった阪神・佐藤輝明内野手(22)が、16日のウエスタン・ソフトバンク戦(甲子園)に出場。降格後初となる複数安打を記録するなど、状態に改善の兆しを見せた。一軍再昇格は最短で21日の中日戦(バンテリン)。一軍返り咲きをめぐり〝強行突破〟の声が上がっている。

 この日の佐藤輝は「4番・三塁」でウエスタン・ソフトバンク戦にスタメン出場。4回に左腕・川原から11打席ぶりの安打となる右前打、さらに8回には右腕・泉からも右前へ。いずれも150キロ近い直球をはじき返し、平田二軍監督も「あとは打球が上がってくるか。練習ではガンガン(本塁打を)いってるけど」と降格後、初の複数安打に復調の兆しを感じ取ったという。

 降格後の二軍戦はこれが4試合目。試合前には15日までの一軍遠征から朝一番で帰阪した井上ヘッドコーチも駆けつけ直接指導を行った。新人ながら一軍で23本塁打を放っている男の早期復調は誰もが願うところだ。
 
 一方で再昇格に必要なのは当然、二軍での成績だが、現実的には状態は一進一退。気前のいい数字は並んでいない。この日までで二軍では12打数3安打で6三振、ノーアーチでまだ打点もない。ほかの野手で結果を残している二軍選手もおり、最短復帰となる来週中の昇格は不透明だ。

 そんななかで「エコひいきと言われてもいいから、10日間で一軍に上げたらいい」と力説するのが、球団OBで阪神・日本ハムで一軍打撃コーチを務めた柏原純一氏(評論家)だ。降格後の佐藤輝が出場した二軍戦もチェックした同氏はこう話す。

「新庄もそうだったけど、彼は性格的に『お祭り男』じゃないかな。もちろん本人は必死なんだろうけど、何か二軍だと余計に覇気を感じないというか。私がコーチだったときの新庄にも同じようなことがあった。上で成績が出ず下に落ちたけど、二軍でボカスカに打ったかって言えばそうじゃなくて。仕方なく、上にもう1回上げて使い出したらまた打ち出して。良くも悪くもみんなに見られているなかで、野球をやったほうがいいタイプかなと思う」

〝雰囲気〟だけではない。降格前までに一軍で23本塁打し田淵幸一氏の球団新人記録を更新するなど、佐藤輝が今後もさまざまな球団史を塗りかえるほどの可能性を持った、将来性ある稀有な存在であることも理由のひとつだ。

「一軍は残り31試合で優勝争いをしてて、それをかなえられるかどうかが今、最も大事なこと。それならば、その責任の一端を彼に背負わせるのもひとつの手。毎試合、結果が出ても、出なくても先発で使い続ける。仮に優勝できなかったら『お前のせいだぞ』ぐらいの責任あるところに置いて。なかなかできない経験だと思うし、仮に思うような結果が出なくても、彼の今後のプロ生活においては、血となり肉となるはず。他の選手と違うのは、来年以降も彼は間違いなく阪神の中心打者でやっていくべき人材だろうからね」

 もちろん、佐藤輝本人も最短での一軍復帰をあきらめてはいない。この日の試合後、その可能性を決定づける週末の二軍名古屋遠征へむけ「(一軍に)上がるためにはやっぱり結果が必要だと思う。結果を出すことはもちろん、自分のバッティングができるように頑張りたい」と決意を口にした。

 果たして怪物ルーキーは二軍で再び輝きを取り戻し、華やかな表舞台へと返り咲けるか…。その運命を決める大事な週末となりそうだ。