【赤坂英一 赤ペン!! 】原さんは本当にお祭りとみこしが好きなんだろうな。「わっしょいベースボール」というキャッチフレーズを聞き、改めてそう思った巨人ファンは少なくないはずである。

 原監督が満を持して新方針を披露したのは後半戦開幕前日の8月12日。東京ドームでの練習前のミーティングだった。

「みこしを担ぐ。みこしを上げる。わっしょい、わっしょい、わっしょいと。そのみこし、ジャイアンツというものに集中し、みこしを担いで前に進む。わっしょいベースボール。それを頭のど真ん中に置いてやろう!」

 実は、原監督にとって「みこし」は定番のネタだ。2002~03年の第1次政権時代にも、こう言いだしたことがある。

「ジャイアンツはみこしなんだ。そのみこしを、チーム全員で担いで勝ち進んでいこうと。それがわれわれの野球だから」

 優勝9回、日本一3回の実績を誇り、自他ともに認める名将となった今とは違って、当時は監督としてはまだ駆け出し。そこでチームの結束力を高めようと「みこしを担ごう!」と選手に呼びかけた。いかにもかつて“若大将”と呼ばれた原監督らしい発想である。

 第2次政権時代の13年には、意外なところで「みこし」を口にした。男性ライフスタイルマガジン<GQ JAPAN>のインタビューに答えてこう語っているのだ。

「巨人軍ではグラウンドの9人だけでなく、ベンチの控え選手も二軍の選手も全員でみこしを担ぐ。大事なのは、監督の僕も含めて、誰もみこしに乗っかってはいけないということなんです。乗っかれるのは、勝利しかありません」

 そうした発言の数々の進化形が今年の「わっしょいベースボール」なのだろう。その原点は何なのか、思い出されるのは原監督の師・藤田監督第2次政権時代に優勝した1989年、控え内野手・上田和明が見せたパフォーマンスである。

 ベンチ内の応援団長を自任していた上田は、試合中に身ぶり手ぶりを交え、選手をあおって「わっしょい」と連呼。優勝した後、ビールかけの最中もみんなで「わっしょい、わっしょい!」と騒いでいたものだ。

 今年、巨人が優勝すれば「わっしょいベースボール」が流行語大賞を受賞するのでは、と期待する声も球団内部にはあるという。が、後半戦は苦戦が続き、先週末の阪神3連戦も2連敗1分けで単独首位浮上はならず。「原みこし」を前に進めるにはまだまだ苦労しそうである。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。