阪神は4日の巨人戦(甲子園)に4―3でサヨナラ勝利。連勝を3に伸ばし、首位の座を宿敵から奪い返した。

 逆風の中、それでもチームを背負い続けた男が、試合を決めた。2―3と1点を追う9回、サヨナラの15号2ランを叩き込んだのは大山悠輔内野手(26)だ。無死一塁から、巨人の守護神・ビエイラの2球目156キロを、思い切りよく一閃。聖地甲子園の夜空に高々と舞い上がった白球は、美しい弧を描き左翼席へ吸い込まれた。

 長引く打撃不振に苦しみ、スタメン落ち、打順降格の憂き目に遭っていた「元・虎の4番」による起死回生の一撃。「死ぬ気で打ちにいきました。大事な試合ということは分かっていましたし、ここで油断することなく、まだ頑張りたい」と背番号3はお立ち台でほほを緩めた。

 だが、熱狂に沸くグラウンドを離れれば、視線はおのずと次戦へ向かう。「今日が良くても明日はゼロから始まるので油断もスキもないようにやっていきたい。コーチ、裏方さんの支えがあってこそなのでその思いを無駄にしないように、一日一日をしっかりやっていきます」。人気球団の主軸打者として批判も称賛も、酸いも甘いも味わい尽くしてきた大山の言葉には、重みと風格がにじみ出る。

 甲子園を舞台にした首位攻防の伝統の一戦。これ以上ないステージでこれ以上ない結果を残すことができた。だが本当のゴールと本当の歓喜はもう少し先にある。