これぞ絶対エースだ。ソフトバンク・千賀滉大投手(28)が2日の楽天戦(ペイペイ)で7回2失点の好投。後半戦自身3連勝となる4勝目を飾り、1分けを挟んで4連敗だったチームに6試合ぶりの勝利をもたらした。

 有言実行の投球が続いている。「自分が投げる試合は絶対に負けられない」。6回に2点を失い、後半戦最初の登板からの連続イニング無失点が「18」でストップしたが、盟友・則本昂との投げ合いを制してチームの危機を救った。

 たくましいエースに〝スイッチ〟が入ったのは7月のことだった。それは東京五輪代表への追加選出。パフォーマンス不足で、千賀が世間の賛否を真正面から受け止めた時だった。左足首の靱帯損傷から復帰した一軍戦で炎上。二軍再調整中に発したのが「僕はもう逃げられない状態に来た」という覚悟の言葉だった。

 今も千賀は「逃げられない状態」で戦い続けている。当時、千賀の五輪招集にネガティブな声は多かった。声の真意は〝代表選手である前に、ホークスの選手としてフル回転してほしい〟。エースは百も承知だった。五輪後の後半戦で有無を言わさぬパフォーマンスをチームで発揮してこそ「誓い」を全うできる――。エースの胸に、あの言葉は生き続けている。

 育成時代から千賀を指導する倉野ファーム投手統括コーチは2か月前こう語っていた。「何の心配もいらない。むしろ周囲の声を聞いて、それを力に変えることができる選手。終わってみれば『やっぱり千賀は千賀だった』となるはず」。チームの信頼とファンの期待を裏切らない快投が、鷹の逆襲を力強く後押しする。