巨人が29日の中日戦(バンテリン)に5―1で勝ち、阪神が敗れたため4月1日以来150日ぶりの首位に躍り出た。立役者は先発して自身初となる2桁勝利をマークした高橋優貴投手(24)。エース菅野がここまでわずか2勝(5敗)と、計算の狂った巨人ローテを、開幕から守り続けた3年目左腕は〝球界レジェンド〟との縁を胸に秘めている。


 勢いのある直球と得意のスクリューを駆使し、竜打線を5回2安打無失点。2点リードの4回一死二塁では竜先発・小笠原からプロ初となる二塁打を放ち、自らを援護した。だが、5回二死満塁で左足をつるアクシデント。治療を受け何とか無失点に抑えたが、6回から2番手・高梨がマウンドに立った。

 その後の試合は5―1で逃げ切り高橋は自身初の10勝をマーク。原監督は「日々努力できる人だから、10勝目という部分でね、野球の神様もほほ笑んだのかな」と左腕に最敬礼だった。高橋は「勝ち星は僕だけのものじゃない。野手の方が打ってくれて、リリーフの方が投げてくれて、すべてそろって勝ちができるもの」とナインに感謝した。

 青柳(阪神)に並ぶリーグトップタイの10勝目を挙げたことで、高橋は「沢村賞」候補にも名乗りを上げた。実は高橋が「自分と一番、縁が深い」と感じているレジェンドが沢村栄治氏だった。

「プロ野球選手で自分と同じ2月1日生まれは沢村栄治さん(1917年生まれ)以外、見たことがないです。キャンプインの日が誕生日だと(記事に)出ると思うんですがまったくない」と高橋は、プロ1年目の2019年宮崎春季キャンプで話していた。

 球春の到来を告げるキャンプ初日がバースデー。芸能界ではギタリストの布袋寅泰(1962年生まれ)、NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主役を演じる吉沢亮(1994年生まれ)らがいるがプロ野球界では数少ない。沢村氏以外では阪急で活躍した高井保弘内野手(1945年生まれ)、20年ドラ5の日本ハム・望月大希投手(1998年生まれ)と極めてまれだ。

 高橋は幼いころから沢村氏と同じ誕生日と意識しながら、腕を振ってきたという。そして袖を通したのは沢村氏と同じジャイアンツのユニホーム。高橋も訪れた東京ドーム敷地内の「鎮魂の碑」には、1944年に戦死した沢村氏の名前が彫られている。

「少しでも沢村さんに近づけるように頑張りたいです」と左腕。投手として最高の栄誉である「沢村賞」を究極の目標として心の奥に秘めている。

 沢村賞の選考基準は15勝、150奪三振、10完投、防御率2・50、200投球回、25試合登板、勝率6割の7項目。現時点では11勝、防御率1・64、4完投2完封の山本(オリックス)が最右翼だが、残り44試合で巻き返しは十分に可能。

 このまま高橋が勝ち星を重ねていけば、チームでは18年菅野以来の栄冠も現実味を帯びてきそうだ。