【宇野勝 フルスイングの掟】3年契約最終年の中日・与田剛監督(55)が後半戦を前に正念場を迎えている。昨季は8年ぶりにAクラス入りを果たしながら、ここまで今季は86試合で前半戦を32勝42敗12分け、借金10の4位で折り返し、CS圏内の3位・ヤクルトとは10ゲームもつけられている。

 低迷の原因は誰がどう見ても貧打だ。投手陣は頑張っていてチーム防御率はリーグトップ(3・31)なのに、チームの得点(249)、本塁打(49)、打率(2割3分8厘)、得点圏打率(2割1分)と打撃部門でこんなにもリーグワーストだらけなのは異常なこと。阪神や巨人らとの得点差は100点前後も離されており、まだ100試合も消化していない時点なのにありえない。はっきり言って打線はひどい状態だ。

 首脳陣は後半戦へ向けて打開策を真剣に考えないといけない。これだけ結果が出ていないわけだから、ここまでやってきた練習が間違っていたとしか言いようがないし、今後はまったく逆の方法で取り組むべきだと思う。野手陣は全体的に速球に弱く、試合でのスイングを見ていると、ヘッドが下がっていて逆方向へ流す打ち方をしている。もっとヘッドを立てて自分の打撃ポイントをフリー打撃などでしっかりつかみ、そこに呼び込んでフルスイングをしていくべきだ。

「中日の野手は選手層が薄いので仕方がない」という声もよく聞くが、そんなことはない。私に言わせれば、いい選手はめちゃめちゃそろっている。もっと得点を挙げたり、十分な成績を残せる戦力はある。それを首脳陣が采配や一、二軍の入れ替えも含め、うまくやり繰りできていないことが問題だ。これだけ打てなかったら、私が首脳陣なら悩んで悩んで円形脱毛症になってしまうと思う。いっそ一、二軍の打撃コーチを入れ替えるぐらい思い切ったことをやらないと変わってこないかもしれない。

 まだ遅くはない。ここから、やりようによっては借金10なら後半戦に巻き返せる可能性も十分ある。それには今までやってきたことは間違いだったと認識し、180度変えることは怖いことだけど勇気を持って変えられるか、だ。

(本紙評論家)