4位に沈むソフトバンクは10日、首位オリックス戦(ペイペイ)に3―1で勝ち、連敗を3で止めた。一夜で屈辱の借金生活を脱出。この日は試合前に小久保裕紀ヘッドコーチ(49)が示した危機感をチームで共有するような戦いだった。

 この日の試合前取材。野手全権を担う参謀は、何とかチームを立て直そうという強い意志を示していた。「選手も去年までの王者がこんなはずじゃないって思いながら、ここまで来ていると思う。でも、もうなりふり構っていられないところまで正直来ていると思うんです。この5試合というのは、どんな形でもいいから得点圏に行った時の〝決め〟というかね。『さあ、いらっしゃい』で無理なのであれば、狙っているところに来た球だけに絞ってというのが大事だと思います」。

 チーム打率は6月が2割1分6厘、7月が2割1分5厘(9日時点)。長引く打線の低迷が「Bクラス」の大きな要因となっていた。金縛りにあったかのように、百戦錬磨の主力にも好機で一打が出ない。自身も選手として実働19年、酸いも甘いもかみ分けてきたからこそ選手の気持ちが分かる。くみ取った上で今一度の覚悟を求めた。

「(現役の時)王監督時代によく言われてたんですけど、得点圏に行った時、逆が来たら見逃し三振でいいくらいの、そういう博打に近いかもしれないですけど、それくらいの気持ちでいかないといい仕事はできないと。今みたいに点が取れない時ほど得点圏に行った時はそういう〝決め〟が欲しい」。ここぞの小久保節で、悪循環に陥る選手を勇気づけた。

 この日は4番に川島を起用し、高卒3年目の野村をプロ初のスタメンに抜擢。大幅なオーダー変更には「王道」ではなく「挑戦者」の意思が表れていた。「王者としてのプライドとか誇りというよりは、もうチャレンジャーとして」。正念場で放った小久保ヘッドの檄はナインに届いていたはずだ。

 試合は小久保ヘッドの現役時代の背番号9を受け継ぐ男・柳田が3回に19号決勝2ランを放って勝利に導いた。マルティネスが7勝目を挙げ、モイネロが復帰戦で1回無失点に抑え、岩崎に先月22日以来のセーブがついた。ここから王者が蘇る。