ソフトバンクのエース・千賀滉大(28)が追加招集された東京五輪への特別な思いを語った。「国の代表、プロ12球団の代表ということで、ちゃんとした姿勢で臨まないといけない。代表の重みをしっかりと感じながらマウンドに上がらないといけない」。今季初登板となった4月6日の日本ハム戦(札幌ドーム)で左足首の靱帯を損傷。前半戦中の復帰は困難という見方もあった中、驚異的回復で戻ってきた。

 6日のロッテ戦(ZOZOマリン)で3か月ぶりに一軍マウンドに帰ってくる鷹のエース。開幕に出遅れ、故障で長期離脱しながらも代表首脳陣の厚い信頼は変わらなかった。稲葉監督は「球界を代表する投手の一人。左右の打者関係なしに自分の持っているものを出してくれれば、おのずと結果はついてくると思う。先発はもちろんWBCで中継ぎを経験していることも大きな武器」と招集理由を説明。千賀はその信頼に応えるべく全身全霊で戦う覚悟を示した。

 日の丸の重みを知っているからこそ、代表への思いは人一倍だった。2017年WBC準決勝・米国戦でリリーフ登板して2回圧巻の5三振を奪いながら決勝点を献上。「あの大会の唯一の敗戦投手。自分の中では日の丸という思いに対して、あの一戦はすごく思うところがある」。濡れた天然芝で跳ねた三遊間のゴロを三塁手・松田(ソフトバンク)がファンブルする形で奪われた失点だったが、後に右腕は「もっといい形で抑えられていれば」と語ったことがある。力をつけ、押しも押されもせぬ日本屈指の投手となった今、あの時以上の圧倒的パフォーマンスで金メダルに導くことを誓って過ごしてきた。

 リハビリ中、稲葉監督からは継続的に気遣いの電話をもらった。「自分の中で『いい準備を』と思っていたけど、ケガで遅れてしまった。それでも選んでいただいたので、思い切り投げられるようにしたい」。

 人生で一度きりの母国開催のオリンピック。緊張感は2017年のWBC以上だと知っている。そういう局面でしか成長できないことがあることも知っている。「やらなくちゃいけない」。日の丸の重みを知る男が、東京でも代表の中心に君臨する。