主砲の復調待ち――。阪神は4日の広島戦(マツダ)に3―4で惜敗。6日から3位・ヤクルト、9日からは甲子園で2位・巨人との前半戦の山場を迎える。〝復調〟が待たれるのは、9試合「打点」のない主将の大山悠輔内野手(26)。6月29日のヤクルト戦から4番を外れた後も「全開」とはいかず、もがいている。そんな悩める男の復調の糸口は〝自己犠牲の証〟とも言える一打にあるのかもしれない。

 手痛い敗戦だ。1点リードの5回に4番手の岩貞が二死一、三塁から坂倉に逆転適時二塁打を浴びたのが直接の敗因だが、試合後の矢野監督が「そこがポイントになったと思うけど…」と振り返った通り、直前のチャンスを逃したことが大きかった。

 5回無死満塁の絶好機で、4番に入ったマルテ、佐藤輝、大山の中軸トリオがまさかの凡退。これで試合の流れを一気に手放した。

 深刻なのが「本来の4番」大山で、不調により6月29日のヤクルト戦から6番に降格。得点圏打率は1割台にまで落ち、9試合打点もない。試合後の指揮官は大山について「また(担当コーチの)意見を聞きながらになるけど、火曜日(6日)は隆(梅野)を上げて、悠輔を下げようかなと思ってる」とさらなる打順降格を示唆。もはや「4番にいつ戻る?」ではなく「どう復調できるか?」に焦点も変わりつつある。

 とはいえ、打順の位置を変えるだけで、打撃の内容も劇的に変わるのであれば苦労はない。ライバルチームのスコアラーが「確かに数字的にはもう少し、残せる力はあると思いますけど、首位にいる今の位置に大山がまったく貢献していないわけではない」と話すように、不振脱出の糸口となりそうな一打が走者を三塁に置いた場面で打者が記録する「犠牲フライ」だ。

 地味な項目ではあるものの、今季の大山の犠飛は「6」でリーグトップ。しかもこのペースは犠飛の歴代記録も狙える記録的なペースでもある。シーズン最多記録は1970年に当時の東映・大杉勝男(故人)が記録した15犠飛。しかも、この年の大杉は44本塁打、129打点で2冠王にも輝いている。

 今の大山も、一発やタイムリーとまではいかなくとも、とりあえず目指すは「最低限」の一打でいい。脇を固める人間は豊富にいる猛虎打線だけに「数字的な上積みも、チャンスでのタイムリーも、犠飛が打てるようになれば、昨シーズンのようなチャンスでの勝負強さもいずれ、戻るはずです」と話すのがライバル球団の007。まずは「一日一善」の自己犠牲から、復活への糸口をつかめばチームも個人も再び上昇するはずだ。