原巨人の逆転V3へ向けたシナリオが見えてきた。シーズン折り返しの72試合目となった27日のヤクルト戦(神宮)を5―2で制し、今季初の7連勝。首位・阪神に2・5ゲーム差と迫った。一方で原辰徳監督(62)はチームトップタイの8勝を挙げている3年目・戸郷翔征投手(21)の出場選手登録抹消を決断。勝負所での戦力充実を念頭に〝温存方針〟へと舵を切った。


 首位追撃の権利は渡さない。巨人は先発左腕・高橋優貴投手(24)が6回81球6安打2失点と好投。同点の6回に4番・岡本和真内野手(24)の21号3ランが飛び出し、9回には主将の坂本勇人内野手(32)がセンターバックスクリーン越えのダメ押し9号ソロ。高橋はリーグトップタイの8勝目を挙げ、チームは今季最多の7連勝だ。

 原監督は頼れる4番に「チームの中でも信頼というものがあるし、みんなで託すというのかな、そういうところもすごく出てきているというのはやはり4番バッターの証ではないかなと思いますね」と最敬礼。8勝の左腕には「良かったと思います。粘り強くね」とうなずいた。

 阪神がDeNAに敗れて18日の8ゲーム差から2・5差と一気に詰め寄った。そんななか、巨人は先を見据えた手を打った。26日に8勝目を挙げたばかりの3年目右腕・戸郷の出場選手登録抹消だ。原監督によれば故障などが理由ではなく、コンディション調整を目的とした措置。実際に戸郷はこの日の試合前練習にも参加した。順当なら7月9日からの阪神戦(甲子園)での登板が見込まれる。

 ライバルの阪神を射程に捉えたとはいえ、まだまだムチを入れる時期ではない。チーム関係者は「肋骨骨折が判明した中川の教訓もある。戸郷は8勝(3敗)しているものの、防御率3・94と本調子にはほど遠かった。26日も抜け球が多かったし、球速も遅かった。疲れているのは明らか。勝負どころはまだまだ先ということ」と指揮官の意図を説明する。

 侍ジャパンとして東京五輪代表に内定していた中川皓太投手(27)は背中痛を訴え、22日に登録抹消。25日になって肋骨骨折で代表を辞退した。チーム最多の32試合に登板していた中川同様、戸郷にはチーム事情により無理をさせてきた。エース菅野離脱によるシワ寄せで、5月25日の楽天戦(東京ドーム)から中4日で同30日のソフトバンク戦(ペイペイ)に登板していた。だからこそ、早めに疲労回復させておこうという配慮だろう。

 慎重起用は先発だけではない。疲労が溜まっている中継ぎ陣も二軍からの昇格には慎重を期している。開幕直後に離脱したセットアッパー・大竹寛投手(38)はすでに二軍で6試合に登板しているが、ここまで昇格を見送ってきた。今月2日に左足違和感で抹消となった守護神デラロサもブルペン投球を再開したが、ゴーサインはまだだという。

 最大の獲物は阪神ではなく、リーグV。虎のしっぽが見えても百戦錬磨の指揮官が鼻息を荒くすることはない。