〝原采配〟の真価が問われている。米球界から電撃復帰した巨人の山口俊投手(33)が23日のDeNA戦(富山)に先発し、6回途中1失点で642日ぶりとなる勝利を飾った。この日の試合は二軍での調整登板を踏まない〝ぶっつけ〟となったが、今季の原辰徳監督(62)は同様の復帰法を多用。五輪中断期間までの残り期間で「スパートをかける」と明言しており、エース・菅野や守護神・デラロサなどもこのパターンで復帰したが、球界内からは長期的に見た問題点を指摘する声も出ている。

 首位奪取に向けて、頼もしい男が帰ってきた。山口は初回、柴田に先制ソロで1点を失ったが、その後は徐々に調子を取り戻し、以降は無失点とした。2点リードの6回に二死満塁としたところで降板とはなったが、6人の救援陣の無失点リレーで久々の勝利を勝ち取った。

 試合後には「ほっとしてるにはしてるんですけど、実際にはこれからが勝負になってくると思いますし、続けてなんとかいい流れでピッチングできていければいいのかなと思います」と率直な心境を吐露。まずは復帰初戦を勝利で飾れたことに安どした様子だ。

 それもそのはず、山口は帰国後、自主隔離などを経て20日に二軍に合流すると、シート打撃にこそ登板したものの、ファームでの調整登板を踏まずに〝ぶっつけ〟昇格。原監督と話し合った末、「もたもたしてる時間もないっていうのは僕自身あったので。出来るだけ早く一軍のマウンドで結果として示したかった」と、強く意気込んでの登板だったからだ。

 山口に限らず、今季の巨人では〝飛び級〟登板が目立つ。米市民権手続きのため離脱していたデラロサも、5月3日に帰国すると、隔離期間明けにシート打撃のみ行い、同21日に一軍昇格&即復帰登板。エース菅野も、「右ヒジの違和感」から回復するや否や、調整登板を行わず、今月6日に一軍で実戦復帰先発となった。

 ただ、その後は2選手ともコンディション不良により登録を抹消。首脳陣にとっては、首位・阪神との差を縮めるために選択した積極策であるが、この策をめぐり球界内からは懐疑的な声も聞こえてきた。

 ある他球団関係者は「優勝を目指す巨人だけあって、復帰目途が付いた投手はガンガンつぎ込む』という起用法は理解できます」とする一方で「球界全体を見ても、昨季にコロナ禍による長いシーズンを戦った影響か、今季になっても疲労感が残っている選手が多く、けが人も多い。今の巨人のようにその日限りの起用を続けていくと、目先の勝利は飾れても、来季にはさらに致命的な影響を残す可能性もあるのでは」と指摘。

 別の球界関係者も「復帰を急いだ上に駄目だった場合は、その分結果的にほかの投手にしわ寄せがいく。普通に考えたら負の連鎖が起こりますよ」と言及する。

 契約最終年である指揮官にとっては、リーグ3連覇、そして悲願の日本一奪回は至上命題。執念の電撃起用は、今後果たして「吉」と出るのか、「凶」と出るのか――。