阪神の守護神・呉昇桓(32)の“無敵計画”が進行中だ。来日1年目から自慢の剛速球「石直球」を武器に39セーブをマークし、最多セーブのタイトルを獲得。9年ぶり日本シリーズ進出の原動力となった韓国最強ストッパーだが、まだまだ満足はしていない。リリーフ失敗ゼロの「完全ストッパー」を目指し、新兵器習得に乗り出している。

 まさにフル回転の1年目だった。レギュラーシーズンではチーム最多の64試合に登板。クライマックスシリーズではファーストステージ2戦目に3イニングを投げるなど6試合すべてのマウンドに上がり、チームを日本シリーズに導いた。リーグ最多の39セーブ、防御率1・76。十分に期待に応えた守護神だが、自身は来季に向けて「失敗したセーブ数を減らしたい」と“完璧”を求めている。

 すでに青写真も描いている。目指すは「石直球」を最大限に生かすためのフォークボールなど大きく縦に変化する球種のマスターだ。現在、呉昇桓が主に試合で投げるのは直球とスライダー。日本シリーズ第4戦では同点で迎えた延長10回二死一、二塁の場面でソフトバンク・中村に痛恨のサヨナラ3ランを浴びた。その日、投げた8球はすべて直球。落ちる球種があれば…と痛感させられる一発だった。

 ただ、大きな壁もある。実は呉昇桓自身も韓国時代から大きく縦に変化する球種の必要性を感じており、サムスン時代の2013年終盤からはスプリットも試したが、まだ試合で自信を持って投げることはできない。呉昇桓が「自分は(他の投手と比較して)相対的に指が短く、フォークボールを投げることができない」と明かすように、不利な条件も存在している。

 それでもリードは絶対に守り切る“無敵ストッパー”となるためにはフォーク系の球種は欠かせない。そんな呉昇桓の意欲に球団もバックアップに動く。チーム関係者は「日本でも指が短めの投手がいるはず。フォークも一般的なものとは違う握りの投手もいたからね。そういう落ちる球の握りをまとめた映像集を用意しようと思っている。その中から呉昇桓が投げられそうなものを選んでもらえれば…」と説明。“フォークボール大全集”の編集をスタートさせるつもりだ。

 現在、補強戦線で大苦戦。課題の投手陣強化のメドが全く立っていないだけに守護神の進化への期待は高まるばかりだ。